〈バイレード〉から、バレンタインデーを記念してオードパルファン「アンネームド」が限定再販中だ。ボトルラベルには好きな文字を入れられるので、自分だけのネーミングの可能性が広がる。
〈バイレード〉の「名前のない香水」がバレンタイン限定再販。名付けるのは自分自身
都会的でクリーン。それでいて細やかな技が美を追求する心にそっと寄り添う。そんなブランド〈バイレード〉から、バレンタインの特別な贈り物が登場した。
2016年に発売され、そのユニークさでたちまちビューティ界の話題をさらった香水「アンネームド」の限定再ローンチだ。
ふだん、調香師は自らのアイデアソースや香りに抱いた感情をネーミングに乗せる。ラベルの上の製品名は、ボトルを見た人の想像力を広げる。それはそれでとても美しいプロセスだけど、〈バイレード〉はあえてクリエイションから名前を取り去った。それが「アンネームド」だ。
私たちは日々、知らず知らずのうちに言葉に感覚を規定されている。脳は認識したものに名前をつけたくなる傾向があるようで、それは世界をきちんと把握し、思考を整理するためには確かに大切なこと。けれど、しばしば呼称は先入観を作り出し、実体や本質を覆い隠す。ときには、名前という手がかりのない状態で、目の前の感覚にぶつかることも大事だ。
どんな香りがするのだろう?と、未知の森に踏み込んでいく。漂ってくるのは、しっとりとした下草の香り。アイリスの根、スミレの花畑、そして苔の毛布が広がっている。スパイシーなピンクペッパーが弾み、頭上には松がすっとのびている。
この感覚にどんな言葉を与えようか。美しい形容詞、大好きな映画のタイトル、思い出の地名…「名前をつける」という行為が私たちユーザーのものになった途端、香りの楽しみ方も変わる気がする。もっと奥まで、もっと細かく、嗅覚の中に思考を沈めてみたくなる。
香りの成分がわからなくても構わない。感情のままに香水に浸るのもまた貴重な体験だから。
2006年の創業以来〈バイレード〉を支えてきたのは、嗅覚の記憶とそこから広がる奇妙な連想だ。「アンネームド」のコンセプトは、ブランドのいちばん本質的な部分を体現している。
単なるフレグランスとしてだけではなく、ラベルに入れる言葉をあれこれ考える時間もプレゼントになる。ブランドオリジナルのタイポグラフィーは、ブラック、蛍光ブルー、グリーン、ピンクの4色で可能。香りという不確かな存在に、世界でひとつの名付けをする。遊び心に満ちた詩的な一本は、愛を語らう日にこそふさわしい。