代官山駅からもほど近い公園に面して建つ木張りのビル。枝を広げる大木のようにも見える建物の内部では、ギャラリーとカフェが螺旋状にひとつながりに展開しています。
代官山で渦を巻く不思議な建築、その正体は?「モンキーカフェ/モンキーギャラリー」
東京ケンチク物語 vol.57
モンキーカフェ/モンキーギャラリー
MONKEY CAFE / MONKEY GALLERY
代官山駅から明治通りへと抜ける道を少し入った辺り。低層の建物が連なる中にぽつりぽつりとショップや飲食店が見えるこの街らしい景色を背に、「MONKEY CAFE / MONKEY GALLERY」は独特の存在感を放つ。角地に建つ3階建て。確かに、窓も3層に重なっているが、一般的な窓の形とは異なり横方向の線が斜めになっていて、大きさが場所によって変わる。その不思議さにつられてぐるりと建物をまわり込むと、見る位置によって、建築の外形もまったく違っているのに気づく。
2014年完成のこちらは、服飾雑貨を中心とした商品の企画、デザイン、販売までを自社で行う企業の本社ビル。ホームオフィスのほかに、自分たちの商品を買う人々との接点になるカフェやギャラリー、ショップなども収める一軒だ。設計は中村拓志率いるNAP建築設計事務所。隈研吾に師事した後、2002年に独立。「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」などの公共施設、商業施設やホテル、住宅などを数多く手がける中村は、この一軒でも、商業施設とオフィス空間をどうミックスするかという課題に対してユニークな答えを示している。建物の平面は十二角形をしていて、通りから入ると、その中心にあたる正面に「MONKEY CAFE」のカウンター。左手側の一段下がった部分に「MONKEY GALLERY」があり、そこから反時計回りに、外周に沿ったスキップフロアを上りながらカフェの客席が展開していく。さらにフロアはそのまま螺旋状に上がっていき、オフィスへと至るのだ。ここに働くクリエイターたちは、ギャラリーやカフェを訪れるお客さんのにぎわいをじかに目にし、直接の声を聞きながら、階段を上って自分のデスクに着く。常に感性が刺激される理想的な職場環境だ。外から見た時に窓が斜めに切れ上がっているように見えたのは、スパイラル状のスキップフロアに合わせた形になっているから。1枚として同じ形の窓はなく、アートが展示されるギャラリー側では小さめに、庭の緑や公園を望むカフェ側では大きくと、空間の機能に合う窓が連続している。街を巻き込みながら創造性が渦を巻いて上っていく様子が見えるような建築だ。
Illustration_Hattaro Shinano Text_Sawako Akune Edit_Kazumi Yamamoto