大人になる前に 知っておきたい 日本の言葉、 季節のあれこれ。
ギンザ淑女のニッポン教養 5月の「端午」とたしなみ

今月のことば
季節を十二支で表した時代、午の月=5月の最初の午の日を「端午」と言いました。端は〝はじめ〟を意味します。春から夏への季節の変わり目に疫病から身を守るため、邪気を払うと信じられた香りの良い菖蒲の湯に浸かったり、菖蒲酒を飲んだりする風習が生まれました。のちに「菖蒲」が武を重んじるという意味の「尚武」と同じ音であることから、武家の繁栄を祈願し、転じて男の子の健やかな成長を願う節句になったのです。
豊玉姫 とよたまひめ
今月の神様
山幸彦(ホオリ)は、兄に借りた釣り針を紛失し、海中へ探しに来て豊玉姫と出会い結婚しました。豊玉姫が懐妊すると「出産の様子を絶対に見ないで」と言って洞窟の中へ籠りますが、ホオリが約束を守れずに中を覗くと、姫はワニ(サメ)の姿に変身していました! ホオリに見られたことを知った豊玉姫は赤子を置いて出て行きます。その時、自分の乳房を引きちぎって洞窟の天井に投げつけていきました。ここから滴る清水が赤子を育てたとか。この伝説は宮崎県の海に面した断崖にある鵜戸神宮に伝わり、今もお乳岩と呼ばれる岩がある洞窟が残っています。
松まつの葉は
今月のたしなみ文具
「松の葉」とは、松葉で包めるほどの、という意味合いで、ちょっとした心づけのことを言います。そういうお金を包むためのぽち袋には、実にさまざまな意匠のものがありますが、白い和紙包みに「松の葉」と筆でしたためて渡すなんていう粋な習慣が昔にはあったのです。職人の手染めによる目にも鮮やかなぽち袋は、渡す方の気持ちも高揚させてくれます。
柾の染紙 松の葉入*5枚入り ¥1,000(榛原)
Photo: Chihiro Oshima Illustration: Hisae Maeda Text&Edit: Mari Matsubara