独断と偏見で選ぶ国内外のマニアックな雑誌に特化したオンラインストア「Magazine isn’t dead. 」を主宰する高山かおりさん。世界中で見つけた雑誌やZINEから、毎月お気に入りの1冊を紹介します。前回紹介したZINEは『VOSTOK』。
音楽とZINEの融合『PLAYBACK LADY ZINE』Magazine isn’t dead Vol.7
まるでライナーノーツのような小冊子とミックスCDがセットになった『PLAYBACK LADY ZINE』。毎号2色のリソグラフで刷られた独特なカラーリングとデザインも魅力だ。始まりは2017年のこと。グラフィックデザイナーの三宅彩さんが5年近くネットを通じてやり取りをしていた、フランスを拠点にする女性2人のスモールプレスRosa Vertovのメンバーが東京に遊びに来ることになったのがきっかけだった。
「実際に会うのは初めてだし、自己紹介的に好きな音楽と極私的な思い出についての小さなジンを、DJのBACK TO BACKのようなスタイルで作ってみようという話になったんです」と話す三宅さん。タイトルに込めた思いについてこう語る。「パンク/ポストパンクの歴史の中で、ほとんど語られてこなかったり忘れ去られてしまっている、女性/クィア・アーティストのレコードを探して再生し、当時の彼女たちの声を集めてジンにしている自分たちをイメージしました」。
お気に入りの音楽についてのパーソナルな思いが綴じられた本誌では、毎号選者が変わる。2号目は群馬県高崎市のNew Boy Coffee & Recordsとのコラボレーションで店主や集うお客さんも参加、Marking issueと題した3号目は、長野県松本市のMarking Recordsの店主など三宅さんを含めて11人が思い入れのある曲とまつわる話を紹介する。
同じ絵を観てもそれぞれ抱く感情が違うように、音楽のそれも同じだ。1つの曲から思い出す、人や景色や場所。100人いれば100通りのストーリーがあるだろう。友人に打ち明けるような親密な語り口、これが好きだというまっすぐな思い。伝えたいことがあれば誰でも発信することができるのが、ZINEの良さだ。三宅さんは、「自分の興味をとことん追求できる自由研究のような楽しさがあります。最近はそれに応答してくださった方々に声をかけて、誰かと一緒に作るアンソロジーの楽しさも知ることができました。ジンを介して出会うことがこのシリーズのコンセプトの一つになってきたと思います」とZINEの魅力について語る。
ちなみに、三宅さんは「No Lady Swears」というディストロ(ディストリビューションの略語、流通の意)を運営し、国内外のパンク・フェミニズムのZINEやグッズの販売をしたり、パンクシーンで活動する女性アーティストのファンジンを作ったり、Battle Jacket Clubというソーイングクラブを開催したりなど、オルタナティブな活動を続けている。
最後に、『PLAYBACK LADY ZINE』を知ったきっかけは何だっただろうか、と考えて思い出したことがある。なんと、私が知ったのは2017年のTOKYO ART BOOK FAIRのGINZAブースだった。まさかその後自分で仕入れて販売する場をつくり、GINZAで紹介することになるなんて思いもしなかった。GINZAに感謝である。
人生は何が起こるかわからないから、面白い。なにげなく耳にした1曲が、自分を変えるきっかけになることだってあると思うから。
『PLAYBACK LADY ZINE』はこちらで販売しています。
この連載では、ginzamag.com読者の手作りZINEを募集しています。決まりがなく、自分を自由に表現できるのがZINEの魅力。オンラインストア「Magazine isn’t dead. 」の高山かおりさんに、自分のZINEを見てほしい!という読者のみなさま。ぜひGINZA編集部まで送ってくださいね。
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高山かおり
独断と偏見で選ぶ国内外のマニアックな雑誌に特化したオンラインストア、Magazine isn’t dead. 主宰。本業は、東京と甲府の2拠点で活動するライター、編集者。生まれも育ちも北海道。セレクトショップ「aquagirl」で5年間販売員として勤務後都内書店へ転職し、6年間雑誌担当を務め独立。4歳からの雑誌好きで、国内外の雑誌やZINEなどのあらゆる紙ものをディグるのがライフワーク。「突然ですが、アイスホッケーが好きです(プレーする側!)。知人から教えてもらったイケてるアイスホッケーの雑誌『CREASE』が気になっています。こんなマニアックな雑誌誰が買うんだろう、と思いますが仕入れる予定です。笑」
Photo: Hiromi Kurokawa Text: Kaori Takayama