『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ 月9)は、田村由美の同名人気マンガのドラマ化。すぐれた観察力で事件を解決に導く“ただの大学生”久能整(菅田将暉)が4話では爆弾魔と1対1で対峙することに……。第4回を、ドラマを愛するライター・釣木文恵が振り返ります。第3回はこちら。
菅田将暉×柄本佑『ミステリと言う勿れ』4話。似たもの同士の終わらないおしゃべり
整と同じくらいしゃべる男、登場
整(菅田将暉)は、常にいろんなことを観て、考える人だ。だからいろんなことに気づいてしまう。気づいたことは、言わずにはいられない。そうやって時に事件に隠された事実に辿り着き、時に人の気持ちをほぐしてきた。
けれど、その一見本筋に関係のないような、脈絡のないおしゃべりは、周りから不思議がられたり、面倒くさがられたりもする。そんななかで、彼のおしゃべりをむしろ楽しんでいたのが我路(永山瑛太)だった。
4話で出会った爆弾魔の男(柄本佑)も、彼のおしゃべりを咎めない人間だ。というか、整と同じくらい、ときにはそれ以上に脈絡なくしゃべり続ける。それは彼が事故で一時的な記憶喪失になってしまったから、秘密にすべきこと自体を忘れてしまったからという理由なのだけど、それでもここまで整と対話し続ける人物はいままで登場しなかった。
ゆるめではあるけれどくるくると巻かれた髪、矢継ぎ早に出てくる言葉、飛躍していく話題。雨の河川敷で整と対峙する男は、整のうつし鏡のようにも見えてくる。
不意に登場する『カルテット』
暗号のついた爆破予告があり、風呂光(伊藤沙莉)は例のごとく整に助けを求める。1つめの予告は爆弾を仕掛けた場所が「品川区内の32階建て」と限定的で、暗号を解かなくても爆弾を見つけられた。2つめも、条件に当てはまる場所がまだ少なくて見つかった。暗号はどうやら推理小説のタイトルで、爆弾はその作者の名前に関わりのある場所に仕掛けられているらしい。しかし3つめの予告の条件に当てはまる場所は限りなくあり、暗号を前の2つと同じように解いてみてもそこには爆弾はない。そんな折、整は事故で記憶をなくした男と出会う。彼は「爆弾を仕掛けたかもしれない」と言い出す──。
4話の内容を要約してしまえば、「爆破予告の時間までに爆弾が仕掛けられた場所を見つけられるか」というじつにシンプルなものだ。整は偶然出会った男ととめどなく話を続け、彼が爆弾魔とわかってからは「なぜですか」と根気よく問いかけ続け、話の内容から爆弾が仕掛けられた場所を導き出す。
暗号は原作にはない要素。江戸川乱歩やエラリー・クイーン、アガサ・クリスティはドラマオリジナルだ。けれど「山賊の歌」や三好達治は原作にもある。ドラマ『カルテット』(TBS)も。『カルテット』といえば坂元裕二脚本、坂元裕二といったら菅田将暉主演の映画『花束みたいな恋をした』! あとは『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ)、『大豆田』といったら伊藤沙莉のナレーション、おっとここにも3が……。
整と、彼と似た存在との違い
爆弾をしかけた男は、母との思い出に対する複雑な感情を抱えていた。整も、どうやら母との関係に何かがあったらしいことが、回想からは伺える。もしかしたら、何か間違えていたら、整も爆弾を仕掛ける側にいたのかもしれない。整と自分を「どこか似ている」と言っていた我路も、風貌も振る舞いも似ているように見えた男も、一線を越えてしまった。そんななかで、危うい場所にいながらも、整は踏みとどまる、事実だけを見つめ続ける。
脚本: 相沢友子
演出: 松山博昭、品田俊介、相沢秀幸
出演: 菅田将暉、伊藤沙莉、尾上松也、白石麻衣、鈴木浩介、筒井道隆 他
原作:『ミステリと言う勿れ』田村由美/小学館(『月刊フラワーズ』連載中)
主題歌: King Gnu『カメレオン』
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Writer 釣木文恵
ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
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