2022年3月26日(土)から4月3日(日)まで、20世紀に活躍した木匠・ジョージ・ナカシマの作品が展示される。会場は、吉村順三設計の建築を改修した鎌倉山「インク ギャラリー」。
鎌倉山で『ジョージナカシマ展』が開催。吉村順三建築に佇む木の家具に会いに行く
コノイドチェアなどで知られるジョージ・ナカシマ。「家具デザイナー」という肩書きを厭い、自らを「ウッドワーカー(木匠)」と呼んでいたという。20世紀を通して木の持つ力やぬくもりを家具の形で表現し続けた彼の作品が、鎌倉山の「インク ギャラリー」にて展示されることになった。
日系2世としてアメリカで生まれ、1934年に初来日して建築家アントニン・レーモンドの事務所に入所。ナカシマは、そこで昭和を代表する「住宅の名手」吉村順三と知己を得て、日本の文物にも触れた。その後、日系人収容所へ送られた第二次世界大戦期などを経て、木を素材に家具作りを始めることとなる。
吉村順三による茶室に置かれた、ブログレンスツール(左)、ミルクハウステーブル(中)、コノイドラウンジ(右)。
若かりし頃に同僚として出会った、ナカシマと吉村。1973年竣工の「ポカンティコヒルの邸宅」では、吉村が設計した大邸宅に、ナカシマが220点以上の家具を制作・納品するなど、その交流は続いた。住まいと家具という別々の道に進んだものの、自然への敬意や気高い簡潔さという点で、共通したエッセンスを感じさせる。二人とも、世の中が大量消費に舵を切り出した時代に、素材と向き合い、「暮らしの豊かさ」を求めていたのだ。
鎌倉山に竣工された吉村建築は、時を経てファッションブランド〈ヤエカ〉が所有する「インク ギャラリー」として生まれ変わった。そして、そのなかにナカシマ家具を置くというのが、今回の「ジョージナカシマ展」の大きな見所。
吉村順三設計、中村外二工務店施工の建築。〈ヤエカ〉が建築家・中村好文とともに本来の姿に戻すような改修を施し、ギャラリーとして再生させた。
住居棟の他に、数寄屋建築の茶室もそなえた鎌倉山の吉村建築での展示。戦後は主にアメリカ・ニューホープの工房で制作活動に打ち込んだナカシマの作品が、日本の暮らしにより寄り添った親密なイメージで現れる。
さらに本展示では、最初期の作品・ブログレン・スツールを復刻。ライセンス制作を行う高松市の桜製作所が、ナカシマの娘・ミラの協力のもと、いままで一度も製品化されることのなかった幻のスツールを蘇らせた。そのほか、多くの特別仕様のナカシマ家具が並び、展示・販売される。
春の鎌倉山で触れるジョージ・ナカシマの精神は、とびきり澄んでいるだろう。暖かくなってきた日々にぴったりなお出かけ先だ。