映画や音楽、本はもちろん、配信動画や舞台、TVにラジオ…。1日が24時間じゃ足りないほど、コンテンツが溢れている現代。目利きの人たちが「面白い!」と感じた作品はどんなものなのか。編集部が気になるあの人に、2022年上半期に触れて良かった「マイベストエンタメコンテンツ」を教えてもらいました。海外ポップカルチャーやセレブ事情に明るいライター・辰巳JUNKの3選は?
2022年上半期、“マイベストエンタメ”を教えて! ライター 辰巳JUNKの3選
【1】
リナ・サワヤマ(Rina Sawayama)の曲
「This Hell」
コーチェラ・フェスティバルにも出演した英国育ちの日本人シンガー、2ndアルバムからのカントリーロック調シングル。米国のセクシャルマイノリティ抑圧州法を背景に、この世は「地獄」だと言い切る一曲。しかし、煉獄だからこそ「あなたといたほうがいい、一緒に燃えあがろう」と連帯のシャウトを放つ。つらい日常を地獄のダンスフロアに豹変させる、力強きエンパワーメント・アンセム。
【2】
ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)のアルバム
『Mr. Morale & The Big Steppers』
ピュリツァー賞を獲得した世界最高峰ラッパーの新作……なものの、そうした崇高な像から降りる「人間」宣言。SNSアクティビズムや政治的正しさ、トランスジェンダーを否定する教会、黒人家庭における女性差別意識の連鎖といったソーシャルイシューにまつわる持論を展開し、激論を巻き起こしていった。どれもこれも簡単に断罪できる語りにはなっていない。だからこそ、神のような視点でニュースを語ってしまいがちな我々聴き手をも「人間」らしい煩悶に引き戻してくれるアルバムだ。
【3】
ROSALÍAのアルバム
『MOTOMAMI』
ビヨンセからBLACKPINKのLISAまで、世界中のスターを魅了するスペインのニューアイコン。フラメンコのモダナイズで脚光を浴びた出自なものの、今回の3rdアルバムはレゲトン、ジャズ、なんでもありな暴走ダンスビートで聴きやすい。「HENTAI」というタイトルにして耽美なバラードがあったり、「散りゆく桜の美」概念をモチーフにした「SAKURA」が終幕曲であるなど、なぜか日本ネタ多め。某アニメ的な猫耳ヘルメットをセレブ界で流行させたのも、本作収録曲「SAOKO」のミュージックビデオ。
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辰巳JUNK
平成生まれ。アメリカを中心に音楽、映画などのポップカルチャー、およびセレブリティ文化について執筆。著書に、20人のセレブから米社会を探求する『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)。