まだ予告編しか観ていないけれど、ウェス・アンダーソンの最新作『アステロイド・シティ』には、ひと目で彼の作品だとわかる要素が詰まっている。安定した水平位置のカメラ、カラーフィルターを通したような色彩、無表情の人物たち。ウェス組常連のジェイソン・シュワルツマンが演じる男にはどうものっぴきならない事情があるようだけれど、ひねりのある会話はたびたび皮肉な笑いを誘ってくる。
そして、ウェスといえば“制服”なのである。思い出してみよう、『天才マックスの世界』(98)は名門校ラッシュモアに通う風変わりな少年の青春譚だった(この作品でデビューしたシュワルツマンは、学生服を模した衣装に自作のラッシュモア・ワッペンをつけてオーディションに挑んだ)。ボーイスカウト風の少年たちは『ムーンライズ・キングダム』(12)よりもずっと前に、ソフトバンクのCMですでにその姿を見せている(そう、ウェスはCMもいくつか手がけている)。『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)のユニフォームは、確かなことだとは言えないものの、パリやロンドンにある老舗ホテル「ザ・リッツ」を参考にしたのではないかと思う。特に、トニー・レヴォロリが演じた“ロビー・ボーイ”ことゼロの制服は、趣向を凝らしたあの美しい紫色をのぞけば、「ザ・リッツ」のページ・ボーイの伝統的な制服にとてもよく似ているのだ。