ボーダーレスでジャンルレス。そんな2020年代を軽やかに体現する才能やムーブメントが次々に登場している音楽シーン。アップカミングな日本のアーティスト6組を気鋭のライター、つやちゃんのセレクトでご紹介。
キラリ!音楽業界ルーキー6選
ミュージシャン新勢力vol.01
リルサマー
Lil Summer

ピュアでメロウ、複雑に煌めくR&Bの原石
ため息のような歌声の中に多様なニュアンスをそっと重ねていく彼女の音楽は、少しずつ肌寒くなっていくこの季節にぴったりだ。地元福岡を拠点に活動しているLil Summerは、今後の飛躍が大いに期待できるR&Bシンガー。音楽を好む両親の影響で、幼い頃から「聴くことも歌うことも大好きだった」と語る彼女。それでも最初はステージに立つ勇気がなかなか出なかったそうで、まずは好きな曲を人に伝えたいという思いで、DJからキャリアをスタートさせている。
その後、少しずつ歌い始めると、福岡の音楽フリークが集まり、重要なクリエイター拠点となっている「como es」でのライヴや、地元のイベントやフェスにも出演するように。また大学時代、NY留学中に作曲を学ぶ機会も得た彼女は、2023年、満を持してLil Summer名義でのデビュー・アルバム『Rojo』をリリース。「rojo」とはスペイン語で「赤」を意味する単語で、どこか官能的なそのタイトルは、同アルバムのムードを的確に捉えたものだった。
影響を受けたアーティストは、D’AngeloやErykah Baduといった90年代R&Bのビッグネームたち。ヴォーカリストとしてはAaliyahやSadeからKali Uchisまで、新旧歌姫の名前が挙がった。サンプリング・テクニックの面ではPharrell WilliamsやJ Dilla、Tyler, The Creatorらから学んだことが大きいという。コズミックなシンセ使いやジャジーなフロウなど、音の端々にセンスが光る彼女のサウンド・メイキングは、その豊かなバックグラウンドで培われたものなのかもしれない。
新曲「Games」はw.a.u所属のシンガー、reinaとのコラボ・シングルで、Kota Matsukawaがトラックを手がけた。今回、自身の音楽を示す3つのキーワードのひとつとして〝ユーフォリア〟を挙げた。「Games」の2人の歌声は、まさに蕩けるような陶酔(euphoria)の境地へと私たちを誘ってくれる。
Lil Summerを
3つの言葉で表すと?
安心・絶望・ユーフォリア

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Lil Summer
2019年にDJとしてキャリアをスタートさせ、現在はR&B、ネオソウルをメインにシンガーソングライターとして福岡を拠点に活動。アンニュイな音世界で注視されている新星。今年8月リリースのニュー・シングル「Games」が記憶に新しい。
Text: Shino Kokawa Cooperation: Tsuyachan