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2001年に公開された米映画『ゴーストワールド』が、スクリーンに帰ってくる。2023年11月23日(木)より、「Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下」ほか全国の映画館で順次ロードショー予定だ。
伝説の“低体温系”青春映画『ゴーストワールド』が再来
ソーラ・バーチとスカーレット・ヨハンソン出演の傑作が22年ぶりに全国上映へ
日本公開当時のキャッチコピーは、「ダメに生きる」。映画『ゴーストワールド』は、高校を卒業したばかりの少女が気怠い日々を過ごしながら人生を始めようともがくさまを描く。ハイティーンを主人公にしつつも、情熱やきらめきといったいわゆる「青春もの」ではなく、ダウナーで"低体温"な作風が斬新とされ大ヒット。この度、2023年11月23日(木)より、22年の時を経て全国の映画館でリバイバル上映が始まる。
主要キャストは、若き日のソーラ・バーチ(18歳)とスカーレット・ヨハンソン(彼女に至っては当時15歳!)。
バーチ演じるイーニドは、就職するもそのコミュ力(22年前にはこの言葉もなかっただろう)の低さゆえに続かない。いっぽう、新聞広告へのいたずら電話をきっかけに出会ったオタク中年男性シーモアと、不思議な友情を築き始める。それが恋かもわからないまま、次第に親友レベッカ(ヨハンソン)との間には溝ができてしまい……。
ストーリーはくるくると展開し、コメディとしても楽しい。ただ、青春の"キラキラしていない面"をとことんえぐっていく作品だ。
どこまでもすっきりしない若者の心を描写するこの青春ストーリーの背景には、文化の均質化による閉塞感と危機感がある。どこでも同じものが大量に揃い、提示された選択肢のなかから選んでいくことが「人生」になっていく、そんな世の中で、自分の本当にやりたいこと、自分にとって本当に価値のあることを掴んでいくのは難しい。それは、2023年の今もなお、米国だけでなく世界中で加速を続けている流れだろう。
「カラフルで明るいけど、それは必ずしも陽気だということを意味するわけじゃない」。本作について、かつて監督のテリー・ツワイゴフはこう語った。
典型的なアメリカの片田舎街を舞台にした画面には、色が溢れている。全編通して50以上のスタイリングが登場するファッションも、見どころの一つだ。ただ、そのカラフルなビジュアルが、実はダークな要素を浮き彫りにする効果を持っているところが、この映画のおもしろさであり、愛すべき点なのだ。
物語を補強するもう一つの存在は、絶妙なサウンドトラックだ。イーニドが親しくなるシーモアはレコードの収集家で、ブルース偏執狂という設定。劇中曲は慎重にそして丁寧に選ばれ、『ゴーストワールド』を他のどんな映画にも似ていない一本に仕上げた。
米ドラマシリーズの『ユーフォリア』('19年)などにも影響を与え、近年、若い世代にもファンを増やしている傑作。スクリーンで鑑賞できるこの機会を逃さないようにしたい。
ℹ️
『ゴーストワールド』
公開日_2023年11月23日(木・祝)
上映館_「Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下」ほか全国の映画館で順次公開
出演_ソーラ・バーチ スカーレット・ヨハンソン スティーヴ・ブシェミ ブラッド・レンフロ ほか
監督_テリー・ツワイゴフ
原作_ダニエル・クロウズ『ゴーストワールド』(プレスポップ刊)
脚本_ダニエル・クロウズ、テリー・ツワイゴフ
製作_ジョン・マルコヴィッチ
⾐装デザイン_メアリー・ゾフレス
⾳楽_デヴィッド・キティ
配給・宣伝_サンリスフィルム
2001年|アメリカ|英語|カラー|ビスタ|111分|原題:GHOST WORLD|字幕翻訳:⽯⽥泰⼦
Text_Motoko KUROKI