2024年2月25日(日)まで、『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』が開催される。1980年代のカルチャーシーンを牽引した画家の軌跡を辿り、日本との繋がりにもフォーカス。東京・六本木の「森アーツセンターギャラリー」にて。
キース・ヘリングがストリートから発信したメッセージとは?
「森アーツセンターギャラリー」に大型作品を含む約150点が集まる

シンプルで力強いアウトラインに、ポップな色調。素朴なのに都会的、そして唯一無二の引力を持つ。難解なモチーフや複雑な構図はなく、没後30年以上経ってもなお、さまざまな年齢、背景の人に愛され続けている。キース・ヘリングの作品の軸にあるのは、「アートはみんなのもの」という思いだ。
1980年、ニューヨークの地下鉄で広告板の黒い紙に白いチョークで絵を描くところからヘリングのキャリアは始まった。「サブウェイ・ドローイング」と呼ばれるこのプロジェクトは、公共空間で創作活動を行うという意味で、アート業界にとってもエポックメイキングなものだった。ギャラリーや美術館ではなくストリートを芸術の舞台としたヘリング。自身がデザインした商品をポップアップで販売し、富裕層以外の人々にもメッセージを届けた。そこでは、作品はただ鑑賞されるものではなく、コミニュケーションツールとして確立したのだ。
そんな「アートの民主化」とでも言うようなムーブメントを作り上げつつ、作家はまっすぐに社会問題へと目を向ける。HIVが蔓延する中で感じた死への恐怖と生の喜びを表現するほか、核放棄や反アパルトヘイトといったテーマにも積極的に取り組んだ。ポスターという媒体を使ったアート・アクティビズムも、ヘリングの大きな遺産の一つだろう。
本展覧会では、画家の歩みを「公共のアート」「生と迷路」「ポップアートとカルチャー」等の全6章で振り返る。ヘリングと日本との関わりも取り上げられ、1988年に東京で発表された茶碗と扇子などが展示される。
会場には大型作品を含めた約150点が集結し、約10年の創作軌跡を一覧できる。展示空間は、来場者がヘリングの世界を「体験」できるように設計。どこからともなく80年代のニューヨークさながらの喧騒が聞こえてきて、壁にかけられた絵はときに光り、ときに暗闇に浮かび上がる。ダイナミックに鑑賞することで、作品もこちらにいきいきとメッセージを放ってくれる。そこから始まる作家との対話を楽しみたい。
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Keith Haring
キース・ヘリング/80年代初頭に地下鉄駅構内で活動開始。1990年にエイズによる合併症で31歳の若さで死去した。偏見や無関心へ立ち向かう意志、芸術は多くの人にシェアされるべきだという思いは、今も作品から溢れている。
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『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』
会期_2023年12月9日(土)〜2024年2月25日(日)
*2024年4月以降に神戸、福岡、名古屋、静岡、水戸を巡回予定。
会場_森アーツセンターギャラリー
住所_東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
時間_10:00〜19:00(金土〜20:00)
*12月31日(日)〜1月3日(水)は11:00〜18:00
料金_一般・大学生・専門学校生2,200円、中高生1,700円、小学生700円*事前予約制(日時指定券)
Tel_050-5541-8600(ハローダイヤル *9:00〜20:00)
Photo_Rinko Yamamoto All Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation
Text_Motoko KUROKI