2023年のクリスマスに飛び込んできた岡村靖幸と斉藤和義による新ユニット「岡村和義」結成のニュース。年明けて2024年1月17日から新曲「I miss your fire」が配信リリースされ、本格的な活動がスタート。そして5月から初の全国ツアーを開催......ということで、お祝い気分でGINZA2022年11月号誌上に掲載された二人の音楽談義を特別にウェブで全文公開!彼らのセッション構想はこの頃から密かに温められていたのかも?! 近年、雑誌媒体での二人揃っての登場はおそらくこの企画だけと思われる貴重な対談は興味深いです。
新ユニット「岡村和義」結成を機にふりかえる
岡村靖幸×斉藤和義 レコードダイアローグ

岡村靖幸さん、斉藤和義さんのお二人がそれぞれセレクトしたビートルズ関連の作品の話題からスタートしたこの対談。ビートルズのメンバーのソロ作品についてや、一緒に観たというドキュメンタリーから受けた影響。日本語とメロディ、作詞に対しての考え、そして音楽を取り巻く現在の状況など、10枚のアルバムを起点にして奥深いトーク・セッションが繰り広げられました。

岡村 斉藤さんにおすすめしたい盤ということで持ってきたのが、ティム・クリステンセンの『ピュア・マッカートニー』。
ポール・マッカートニーとリンダ・マッカートニー (*1)のアルバム『ラム』をティム・クリステンセンらが完全再現したライヴ・アルバムです。これを聴くと当時のポールのキーでそのまま歌っていて、すごく盛り上がっているのがわかる。「あーきっとポールがライヴをやっていたらこんな感じだったんだろうな」と思わせるライヴ盤ですね。ポールは現在まで『ラム』や自身のファースト、セカンド・アルバム、それからウイングス(*2)の『ワイルド・ライフ』などは、どういうわけだかライヴでほとんど演奏していないんですよね。それでポールのファンのミュージシャンたちがやってみたいと思ったんでしょう。でも以前、斉藤さんは「『ラム』はあんまり好きじゃない」って言ってました(笑)。
斉藤 というより、あまりちゃんと聴き込んでいないんですよね。ポールのソロは一応持ってはいるのですけど。
岡村 ジョージ・ハリスンやリンゴ・スターのアルバムは?
斉藤 ジョージの作品には触れていたかな。『オール・シングス・マスト・パス』(*3)とか『クラウド・ナイン』(*4)とか……でも、その2枚くらい。リンゴのソロはほとんど聴いてないですね。
岡村 僕はビートルズ関連はひと通り聴いていましたね。でも、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの『ウェディング・アルバム』(*5)と『未完成』、それから『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』(*6)は、値段は高いし内容は前衛的だしで、子どもにはちょっと……という感じでした。
斉藤 そうですね。『未完成』は今日持ってきたんですけど、ジョンとヨーコが初めて夜を一緒に過ごした際にレコーダーを回したと言われていますね。
岡村 ジョンのヨーコへの深い深い、依存と言ってもいいほどの愛が伝わってきます。
*1 リンダ・マッカートニー_[1941-1998]アメリカ・ニューヨーク出身のフォトグラファー、ミュージシャンで、1969年にポール・マッカートニーと結婚。バンド「ウイングス」では、コーラスとキーボードを担当した。ポールとの間の次女はファッション・デザイナーのステラ・マッカートニー。
*2 ウイングス_ポール・マッカートニーがビートルズ解散後の1971年に結成したバンド。メンバーはリンダ・マッカートニー、デニー・レイン、デニー・シーウェルなどで、ファースト・アルバム『ワイルド・ライフ』以降、オリジナル・アルバム7作を発表し、1981年に解散している。
*3 『オール・シングス・マスト・パス』_ジョージ・ハリスンの1970年リリースのソロ1作目。ブルース、フォーク、ロックンロールと多彩な楽曲を生き生きと奏でた歌ものの楽曲集だ。
*4 『クラウド・ナイン』_ヒット曲「セット・オン・ユー」を含む、ジョージ・ハリスンの1987年の作品。ドラムのリバーブやシンセサイザーの多用など、この時代らしい音ではあるが、渋いブルースや小気味よいロックという、ジョージならではのメロディ・センスが光る内容である。
*5 『ウェディング・アルバム』_1969年にリリースされたジョン&ヨーコの3作目。ボックス・セットとして発売され、結婚の手続きをする場面や有名な「ベッド・イン」の写真などを表裏に配したポスター、ウェディングケーキの写真などが封入されていた。
*6 『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』_2枚組LPでリリースされた、ジョン&ヨーコの1972年のアルバム。2人のほか、ジム・ケルトナー (ドラムス)、フランク・ザッパ(ギターなど)が参加している。前衛的な初期作品に比べるとロック・アルバムとして聴くことができる。
Photo_Masahiro Sambe Styling_Yoshiyuki Shimazu Hair&Make-up_Harumi Masuda (okamura), Maiko Ichikawa (saito) Interview&Text_Kenichi Aono Edit_Mari Matsubara Cooperation_Bar B-10