文化的活動の担い手として波に乗る方々に、今年これまでに触れた中で印象的な作品ベスト3を聞いた。以前からある本や映画でも、読んだり観たりしたのがこの半年ならOK!独自の視点に興味津々だ。短期連載「2024年上半期のマイベストカルチャーを教えて!」第1回は、映画監督の山中瑶子さん。
山中瑶子さん、2024年上半期のマイベストカルチャーを教えて!
映画
『AN UNFINISHED FILM』
10年前に撮影中断してしまった映画の監督とスタッフが編集室に久しぶりに集まり、昔のwindowsを起動させてその「未完成の映画」の素材をチェックする場面から始まる、もうこの時点でグッときました。年齢を重ねたことで後ろ向きな姿勢でいる主演俳優(ロウ・イエ映画の常連であるチン・ハオ)を説得し、やっとのことで2020年1月、中国の武漢市で撮影が再開されるのだが、そう、この時期と場所といえばパンデミック!ホテルに閉じ込められるクルーたちが、スマホのみでしか互いや家族とつながれなくなってしまう。というあらすじからもう面白い。そして何といっても終盤はびっくりするほどの多幸感。そうだった、あのとき、世の中には悲しいことも苦しいこともたくさんあったけど、馬鹿馬鹿しくって楽しい瞬間もあった。どう向き合えばいいかわからず、なかったことになりつつあるあの3年余りを思い出すにはちょっと幸せすぎる時間で、怒る人もいるかもしれないけれど、わたしは本当に観てよかったと思いました。
Text_Minori Kitamura