私たちに作品が届くまでの裏側を知りたい!映像制作に携わるたくさんのスタッフの例とその役割のリストはこちら〜お仕事紹介編〜今回は、話題のドラマを手掛ける美術のプロフェッショナルに取材、興味津々の現場について教えてもらった。#ドラマ制作に関わる職人たち
ドラマ制作に関わる職人たち〜美術編〜
美術
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お話を聞いた人:小島伸介
こじま・しんすけ>> 美術監督。種田陽平に師事し、国内外の映画に助手として参加。近年は映画『何者』『TANG タング』や企業CMなどを担当。ドラマ『サニー』がApple TV+で配信中。
主人公の家から街の交通標識まで、映るもの全ての舵をとるヴィジュアルの番人
「おもに役者さん以外の、映像に映るもの全般の責任をもつ立ち位置です」
ドラマや映画における美術監督の仕事について、そう説明してくれたのは小島伸介さん。キャリアのスタートは、映画『キル・ビル』だ。
「当時、何か面白いバイトがないか探していて。地元の学校で建築を学んだのもあって、美術監督の種田陽平さんに『助手のバイトがしたい』とメールしてみたんです。するとポートフォリオを見てくれて、『1回東京に来いよ』って。種田さんは翌々日にクエンティン・タランティーノ監督の面接を控えていて、急きょポートフォリオをつくるのを手伝うことに。それから少し経って、『キル・ビル』が決まったから、来年から東京おいでと連絡をもらいました」
国際的な大物のもとで助手デビュー後、美術監督として独立。最新作は、A24製作によるAppleオリジナルシリーズ『サニー』。コロナ禍中の2022年に京都と東京でロケが行われ、ラシダ・ジョーンズ演じる主人公スージーの夫で、ロボットエンジニアのマサ役を西島秀俊さんが演じたことでも話題の近未来SFだ。
「ハリウッド作品だと、たとえ舞台が日本でも、アメリカで活躍しているプロダクションデザイナー(美術監督)を採用するケースがほとんどです。でも、今回はショーランナー (ハリウッドなどのテレビドラマ業界において、番組全体を統括する責任者。おもに企画を立ち上げた脚本家が務める)のケイティ・ロビンスに“いかにも外国人視点になるのを避けるため、美術は日本人に任せたい”という意向があって。オーディションの結果、数名の候補のうちから選ばれました。撮影開始の1年くらい前です」
アメリカ資本の配信ドラマのため、日本の地上波作品とは少し事情が違う。オーディション段階で3話までの脚本が届き、それを参考にムードボード(視覚要素をコラージュし、世界観のアイデアを視覚化するラフ)をつくることからはじめたという。
「一口に“近未来の京都”といっても、映画『ブレードランナー』のようなディストピアや、現実の地続きにある雰囲気などいろいろ考えられる。そんな中、メイン監督のルーシー・チェルニアクから最初に言われたのは、鈴木清順監督の『東京流れ者』や、シドニー・ポラック監督の『ザ・ヤクザ』が大好きだということ。共に60〜70年代の映画だったことから、今回はレトロフューチャーっぽい感じがいいのではという話に。黒川紀章らが提唱した建築運動のメタボリズムとか、丹下健三とか、その辺りの未来感が逆に新しいんじゃないかと。それで、例えばマサの勤め先であるイマテック社のロケーションには、丹下の右腕だった大谷幸夫が設計した、1966年竣工の国立京都国際会館を選んだりしました」
Photo_Kanta Torihata(portrait) Text&Edit_Milli Kawaguchi Copyright ©Shinsuke KOJIMA All Rights Reserved.