2024年11月に初の単独ライヴを満員で終えたjo0ji。2021年にYouTubeに公開した「不屈に花」が話題となり、2024年6月にメジャーレーベルと契約したばかり。シンガーソングライターとして駆け抜けた1年間を振り返ったとき、思うことは?
jo0jiが振り返る、ミュージシャンとしての1年間
大事な人たちの夢を載せて、音楽を作る
デビューからの“集大成”ライヴを終えて
「今年のハイライトは、やっぱりワンマン、それもアンコールですね。「≒」(ニアリーイコール)という曲をやって、バンドメンバーも涙ぐんでいて(笑)。お客さんの感情を掴むぞ!と臨んだ場面ではあるので、それが目指していた以上にうまくいったと言えるかもしれません」
普段は鳥取に住み、漁港の仕事をしながら音楽活動をするjo0ji。友人のために制作した「不屈に花」がYouTubeを中心に注目を集めた(2021年にYouTubeに公開したものは現在は非公開となり、EP版の同曲が公開されている)。2023年9月に初のEP『475』をリリース。そこから7曲の配信シングルを発表し、2024年11月の渋谷・WWW X、大阪・Yogibo META VALLEYでの単独公演『漁火』まで、濃厚な約1年を過ごした。「その集大成が、ワンマンライヴだったと思います」と続ける。
「この1年で、自分が憧れていた人たちと知り合えて、一緒にものを作ることができた。昔から聴いていたWONKの江﨑文武さんや井上幹さんが「不屈の花」をはじめ数々の編曲に参加してくれたのもすごく嬉しいことでしたし、ヘアメイクを担当してもらっている高草木剛さんとと木村一真さんは、僕、インスタを以前からフォローしていたんですよ。ファンですね(笑)。King Gnuもずっと好きだったので、そのアートワークを手掛けてきたMargtと仕事をできているのも、すごいことだなと…。漁火って、夜の海の遠くのほうに光って見えるんです。僕にとって“手の届かない灯り”だった人たちと実際に出会えたことへの感動と、次は自分が誰かのそういう存在になりたいという思いを込めて、公演タイトルをつけました」
ライヴ会場はドアから人が溢れ出そうなほどに満員で、終演後には涙を流しながら帰る人もいた。jo0jiはすでに多くの人の「漁火」になっているし、これからもっともっとその炎は大きくなっていくだろう。その理由は一度作品に触れればすぐにわかる。ロックでもありフォークでもあるような、昭和歌謡の影響も受けた曲調は唯一無二。どの曲でも予想を裏切るメロディ展開が起こり、そこに少し気だるげな艶のある声がのる。歌詞には独特のワードセンスがきらめいていて、身近な感情をこんなにも新鮮に見つめられるのかと驚く。
ただ、劇的に環境が変わっていく中で、戸惑いや制作上の迷いがなかったわけではない。2024年10月にリリースされた「BAE」(ベイ)のセルフライナーノーツでは、人からの評価を気にしてしまう時期があったと、まっすぐに綴っている。
「『不屈に花』は落ち込んでいる友人を慰めるために作ってみたものですし、元々身近な人が聴くのを想定して音楽活動をしていました。そこに、“世の中”つまり不特定多数に向けて発信するという視点が入ってきて。新しいフィルターがかかり始めたんです。でもそのフィルターをつけた状態だと、納得のいくものは生まれなかった。みんなに好かれるような器用な作り方はできなくて。それをMargtに相談したら、『jo0jiは不器用なまま作ってみたら?』と言ってくれたんです。そこで、シンプルに考えることに決めました。『目の前にいる人間がすべて』。自分のいちばん近い世界に向けて音楽を作る。それが、結局その“先”の世界にもつながっていくだろう、と」
同じく10月には新曲「ワークソング」も発表。「ラブ」ではなく「ワーク」を題名に置いた作品を、自身は「生活の歌」と形容。
「生活のなかに夢がたくさんあると楽しくなるよね、ということを言いたかったんです。僕自身のミュージシャンとしての活動の規模が大きくなり、関わる人も増えてきた。そんなときに制作を義務的な意味での“仕事”にするのは嫌だ。楽しくなくなってしまいそうだから。けれど、実際は曲作りをワクワクしながら続けられている。それはなんでかと考えたら、僕の仕事に色々な人の夢が乗っているのだと気がついたからなんです。家族や友人、スタッフさん、そして聴いてくれる人たち。みんなの夢があるから、仕事を“ライフワーク”として味わえる」
どこまでも原点に忠実で、目の前の人すべてに誠実に接する。まわりのスタッフのこともニックネームで呼び、「もう、友達ですね」とふわりと笑う。インスピレーションもエネルギーも、周りの人への愛情から生まれているのだ。
シャツ (jo0ji×ANCELLM)/デニム(ANCELLM *参考商品)/その他*スタイリスト私物
Photo_TAKAY, Ayumu Kosugi(live) Styling_Kan Fuchigami Hair&makeup_Go Takakusagi Text_Motoko KUROKI