設楽浩暉(志尊淳)のもとに駆けつけた筒井万琴(岸井ゆきの)。そこで10年にわたる事件の真相が語られ……。水曜ドラマ『恋は闇』(日テレ 毎週水曜よる10時〜)10話(最終話)を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。9話レビューはこちら。
*レビューはネタバレを含みます。
ミステリー×恋愛、そして報道。全てがうまく収まった
設楽浩暉(志尊淳)のもとに駆けつけた筒井万琴(岸井ゆきの)。そこで10年にわたる事件の真相が語られ……。水曜ドラマ『恋は闇』(日テレ 毎週水曜よる10時〜)10話(最終話)を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。9話レビューはこちら。
*レビューはネタバレを含みます。
『恋は闇』が最終回を迎えた。
世を震撼させた「ホルスの目」連続殺人事件の真犯人は夏八木唯月(望月歩)と、設楽浩暉(志尊淳)。拘束されたターゲットの採血を浩暉が行い、その後唯月が殺害するという二人の共同作業だった。毎回このレビューを書くたび、浩暉の「暉」にあえてこの漢字を使ったのはなぜだろう? と考えていた。浩暉と唯月、太陽と月を象徴する「ホルスの目」の要素が最初から名前に込められていたのだ。
スーパーの跡地を訪れた筒井万琴(岸井ゆきの)に、その場にいた浩暉、そこに駆けつけた唯月によって真相が語られる。10年前、スーパーで働く唯月最愛の母(太田美恵)が浩暉の母・久美子(紺野まひる)に侮辱された。久美子殺害の計画を練って自宅に侵入した唯月の前に、みくる(齋藤飛鳥)に刺された久美子がいたという偶然が、全ての始まりだった。まだ息のあった久美子にとどめを刺したのは唯月だったが、唯月は駆けつけた浩暉に異母妹のみくるが殺人犯とバレてもいいのかと迫り、犯罪に協力させる。そして二人は数々の殺人事件を2015年から繰り返し起こしていた。さらに久美子殺害犯として服役していた浩暉の父・貫路(萩原聖人)出所後、より派手に「ホルスの目」事件をスタートさせた。浩暉は義母を殺害し、さらに病気で常に血液を必要としているみくるのため仕方なく協力はしていたものの、実は素人の採血した血は使えたものではなく、結局闇で血液製剤を購入して使っていたというのも、悲しい現実だ。
大和田(猫背椿)を殺害したのも唯月。左利きを偽装していた唯月が、大和田に本来右利きであることを見抜かれ、疑いを向けられたせいだった。5話で大和田が階段で足を踏み外し、唯月が受け止めるシーンが謎にスローモーションで描かれていたが、あのシーンにはちゃんと意味があったのだ。9話で唯月が落としたように見えた注射器のようなガラス容器はアトマイザーで、血の匂いをごまかすために使っていたラベンダーのフレグランスだった。向葵(森田望智)の淹れたラベンダーティーの香りで、万琴は唯月の関与に気づいたのだった。ここで注射器を落とすのはちょっと雑だなと思っていたが、こちらの勘違いで、ちゃんとした伏線だった。
唯月は最初から怪しい人物の一人だった。最初の犯行のきっかけは些細だし、その後の連続殺人の動機は弱い。けれど、その犯行を「疑わしいけど、あまりにも疑わしすぎて犯人のはずがない」と思われた浩暉が手助けしていたという展開が、作品に奥行きを与えていた。真っ当な正義感を持つ浩暉が、10年間他の方法を探ることはできなかったのかとも思うが、みくるという存在を前にどうすることもできなかったというのも納得はできる。ずっと疑わしかった貫路に野田(田中哲司)が「あんたが犯人だったらストーリーが整理されすぎてんだろ。人間ってもっと、チグハグなんだよ」と話していたが、それはまさに浩暉の振る舞いに当てはまるのかもしれない。
Edit_Yukiko Arai