10周年を迎えたwrittenafterwards。展覧会とファッションショーを同時開催し、勢いを増す山縣良和氏に、今回のテーマ、また今後の活動について訊いた。
10周年を迎えたwrittenafterwards。山縣良和氏に今回のテーマ、また今後の活動について訊いた

2017年、11月の下旬に東京都庭園美術館にて〈writtenafterwards〉のファッションショーが開催された。日が落ちるにつれて冷え込む野外会場。きれいに手入れされた植木の周りを円のように椅子が囲む。まず登場したルックはマスコミに囲まれ歩く女性。続くのは子どもを乗せたリアカーを引く男性、焦げた着物が山のようになっている立体、棺を運ぶ男性……。夢のようだけど、どこか痛々しい現実が垣間見える「After Wars(戦後)」と題された今回のショー。
「テーマが大きいので、戦争を実際に経験していない僕らが、どうしたら嘘にならずに戦後を描けるかというのを意識しました」とデザイナーの山縣氏は言う。
被曝、メルトダウン。戦後を連想させるこういった言語が、3・11以降私たちにも親近感あるものになった今、「遠いけど近い」〝戦後〟への新たな解釈を試みたという。
「リアカーを引く男性は、僕が幼少期に観て強烈に印象に残った『火垂るの墓』の疎開するシーンを思い出し、インスピレーションにしました。まさに戦後を象徴するものですが、歴史的なものと現在を行き来できるように、後ろにいる女性が身につけている服には現代的な素材のプリーツを施したオーガンジーを使用しました」
今年で10周年を迎える〈writtenafterwards〉。10年の活動を振り返った〝あとがき(afterword)〟のような言葉を残したいという思いから、谷川俊太郎氏に文章を頼んだという。〝12の問いかけ〟と題されたこの文章は、山縣氏が谷川氏に言葉を求めた、というところから始まる。「柔らかな布の手触りだけで十分なのに」と、続く詩はまさに今まで山縣氏がファッションを通して表現しようとしてきた軌跡を言語化したもののように思える。そしてこの文章は、今回のショーに続いて同時開催されている展覧会『装飾は流転する 「今」と向きあう7つの方法』にも展示されている。そこでは〝装飾とは〟という問いを基にして構成。[THE SEVEN GODS]と題された天井に届きそうなほどキラキラとしている衣装や、神へのファッションショーを想像した今までのコレクションを含み、ショーで発表した最新のものまでを展示。
「着飾ることを考えて歴史を振り返ると、〝祝祭〟が重要なキーワードであることがわかります。神秘的に見せるという行為が重要な要素になっていて、シャーマンや神の化身といった装飾性のようなものをどう現代的に落とし込めるのかが、今後の表現活動としての課題ではありますね」
ファッションショーと展示という2つの大きなイベントを同時に成し遂げた今回。「完全にキャパシティを超えていて、死にそうでした(笑)」と語るものの、その中だから生まれる面白くて型破りな〈writtenafterwards〉の世界が、また見る人の期待を膨らませるのだろう。








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1 / 4開催中〜2月25日/東京都庭園美術館(本館・新館) 山縣氏を筆頭に、国内外で活躍する7人の作家が参加。年齢、作風、ジャンルも異なる個性豊かな作品が“装飾”をあらためて見直させる。
Photo: Masato Kawamura Text: Mayumi Yamase Edit: Shun Sato, Akira Takamiya