体格のいいホテルの宿泊客がスナックで酔いつぶれてしまい困るという、『水曜日のダウンタウン』「大鶴肥満が酔いつぶれたら一巻の終わり説」(2024年10月2日放送回)のような出来事が起きた『ホットスポット』(日テレ 毎週日曜よる10時30分〜)6話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。5話レビューはコチラ。
『ホットスポット』6話「CAT’S EYE」を歌い上げる中本さん(野呂佳代)のメンタル!
市川実日子というフィルターを通すことで漂う切なさと温かさ

考察『ホットスポット 』6話
日常が積み重なった先に
うっかり秘密が漏れる
高橋さん(角田晃広)が宇宙人であることがテレビを通じてバレるか、という波乱の5話を乗り越え、清美(市川実日子)たちに日常が戻ってきた。冬場のホテルロビーの寒さ。ホテルの現オーナーに対する、具体性のない悪口。昼ご飯の選択肢。2リットルのペットボトルが客室の小さな冷蔵庫に入らないこと。そんな『ホットスポット』における彼らのなんてことない会話の中には、高橋さんの能力に関するものもある。世間にはバレていないものの、5話で高橋さんが宇宙人であることを知る人間に支配人(田中直樹)、由美(夏帆)が加わった。もっとも、由美は信じていないのだけれど。
「もんぶらん」での貯金会の会話もいつも通りだ。小学生時代の思い出話に花が咲く中、あやにゃん(木南晴夏)から同級生ののんちゃん(MEGUMI)のスナックに誘われ、4人で向かうことに。あやにゃんが運転する車の中で相変わらずしゃべりまくる流れで、清美たちは高橋さんが宇宙人であることをバラしてしまう。というか、その秘密をあやにゃんも共有している気になって口を滑らせてしまう。内容的には視聴者の経験と決して重ならないはずなのに、シチュエーションにリアリティがありすぎて共感できてしまうこの感じ。「あやにゃんバレ」までのおよそ20分余、過剰なまでに日常が積み重ねられていったのはこのためだったのか、と思えるようなシーンだった。
そういえば『ブラッシュアップライフ』(2023年)でも、木南晴夏演じる「みーぽん」が運転をして同級生4人が会話する、今回と重なるような印象的なシーンがあった。思えば、バカリズムが脚本家として初めて手掛けた連続ドラマは『素敵な選TAXI』(2014年)。キャリアの最初期から、バカリズム作品の「車の中での会話」は物語にとってかけがえのないものなのだ。
真実を知ったあやにゃんは自身の父親が九州出身であることを重ね、「それの遠い版」とすんなり理解する。
「私たちは、あやにゃんの反応を見て、多様性を受け入れるとはこういうことなんだと思った」
由美の受け入れなさ、あやにゃんの受け入れ方。本来現実にはありえなそうな事象を通じて「その人らしさ」が描かれるのが面白い。
Edit_Yukiko Arai