ガラス作家、ユリ・イワモト(Yuri Iwamoto)の個展『フォレスト』が開催中だ。自由な造形で自然の息吹を表現する作家が込めた思いを取材。2025年4月29日(火)まで、東京・目黒区「コンプレックスブースト」にて。
生命力を宿したガラスのオブジェたち
ユリ・イワモトの個展『フォレスト』ではランプシリーズも公開

力強く、同時に繊細。ガラスという素材に魅せられたのは、色とテクスチャーとの結びつきへの興味からだったとイワモトは話す。本展では、植物の色を強く意識したカラーリングの作品を発表。そこでイメージされているのは、無数の木々や草花の生命力がざわめく深い森だ。
「私はガラスで“体”を作っているのだと考えています。柔らかく揺れ動く素材に生命力や得体の知れなさを感じていて、そこから“木”という体や“花”という体、“果汁”という体を作ってみようと試みました」
富山県で暮らすイワモトにとって、自然が持つ莫大なエネルギーが大事なインスピレーション源。毎年雪が解けるとたんに山辺に花が咲き、ついで種をつくっていく様子に、命の営みを感じてきた。
「富山の街は、北を海、東南西を山々にぐるっと囲まれていて、自然の手のひらの上に生きている感覚が常にあります。自分の制作テーマの一つは『命への讃歌』。ガラスが光るとき、そこには生命の謳歌とでもいうようなポジティブさが宿る気がします」

そんな思いは新作の照明シリーズにも反映されている。
「電気(栄養)が根(コンセント)から茎(コード)を通じて供給され、光る(咲く)という構造にもストーリーを感じています。ガラスは光をゆがませたり、包み込んで拡大したりする。その造形言語が作り出す意味はまだまだあるはず。それを開拓していくために、ランプ制作は続ける予定です」
会場に展示される作品群は、それ自体が深い呼吸を繰り返しているかのよう。生活に寄り添い、そっとエネルギーを与えてくれるオブジェクトに出合えるはず。
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【Yuri Iwamoto Exhibition 『Forest』】
会期_開催中〜2025年4月29日(火)
会場_COMPLEXBOOST
住所_東京都目黒区青葉台1-15-10 1F
時間_12:00〜19:00
*月曜休廊
Text_Motoko KUROKI