2024年、下瀬美術館(広島県大竹市)はユネスコ設置のベルサイユ賞をミュージアム部門で受賞。その記念となる企画展『周辺・開発・状況 — 現代美術の事情と地勢 —』が開催中だ。美術館と周辺環境、アートと展示空間、日本と東アジアといったさまざまな関係性を問う作品が展示される。2025年7⽉21⽇(⽉)まで。
“世界で最も美しい”下瀬美術館で初の現代アート展
ベルサイユ賞受賞の記念企画『周辺・開発・状況ー現代美術の事情と地勢ー』が開催

2023年に開館した下瀬美術館。水盤に浮かぶ色鮮やかな8つの可動展示室や、瀬戸内の景色を映しながら複数の棟をつなぐミラーガラス・スクリーンなど、建築家の坂茂によって「アートの中でアートを観る」場所が作り上げられた。2024年には、優れた建築デザインを讃えるためにユネスコが設置したベルサイユ賞をミュージアム部門で受賞。「世界で最も美しい美術館」と認められたかたちだ。
そんな下瀬美術館で今、ベルサイユ賞受賞の記念企画として、初の現代美術展『周辺・開発・状況 — 現代美術の事情と地勢 —』が開かれている。チーフキュレーターに美術家の齋藤恵汰を迎え、コキュレーターとして松⼭孝法、李静文、根上陽子が参画。東アジアにルーツを持つ参加作家9組も含め、1980年から2000年生まれの若手による意欲的な展覧会だ。
着想源は、下瀬美術館というロケーション自体。建物の美しさは、瀬戸内という周辺環境と一体化しながら輝いている。奇しくも広島は、海に浮かぶ宮島も擁する。本展は、下瀬美術館と宮島に相似を見て、そこに引いた補助線を日本と東アジアとの関係にまで伸ばしてみる試みだ。9組のアーティストは、それぞれに展覧会場というフロンティアに対峙し、環境への反応としての作品を発表する。
瀬戸内の穏やかな景色の中にたゆたう美術館で展開される、9組のクリエイティビティ。場所と物との関係性を探りながら、ゆっくりとアートの世界に浸りたい。
ℹ️
『周辺・開発・状況 — 現代美術の事情と地勢 —』
会期_開催中〜2025年7⽉21⽇(⽉)
会場_下瀬美術館
住所_広島県大竹市晴海二丁目10-50
開館時間_9:30〜17:00(入場は〜16:30)
*月曜休館(祝日は開館)。
観覧料_一般2,000円、高校生・大学生 1,000円、大竹市民 1,500円、中学生以下無料
*20名以上で団体割引あり。
Text_Motoko KUROKI