身につけると甦ってくる、あのとき熱狂したライヴの情景やサウンド。ミュージシャンを愛するあの人のスペシャルな私物マーチをご紹介します。
井野将之のとっておきマーチ。Limp BizkitのTシャツ
音楽が好きだから♡
井野将之
doublet デザイナー
💘
Limp BizkitのTシャツ

「中高生ぐらいから、コンサートに行ってはTシャツを買っていました。最初は大切に部屋に飾っておいて(笑)。リンドバーグ、ザ・ハイロウズ、サザンなど、日本のバンドから入って、その後、洋楽に目覚めてパンク好きに。セックス・ピストルズのTシャツは、袖を切ったり安全ピンを刺したりしていました」
この1枚はアメリカのニューメタルバンド、リンプ・ビズキットの1998年製のもの。
「専門学校時代にどハマりして。当時はリンプが映画『M:I-2』(00)のテーマ曲を作ったり、ミクスチャーの全盛期。これを入手したのは8年ほど前で、取引先の店と古着のロックTをリメイクする企画を進めていた時に見つけて譲ってもらいました。文字だけのシンプルなグラフィックやオーバーサイズもいい。今後はアーティストのTシャツもデザインしてみたいですね。今だとYOASOBIとか。〈ダブレット〉の23AWは『BEASTARS』という漫画にインスパイアされたコレクションで、主題歌を彼らが手がけていたんです」
バンドTの魅力は?
「音楽は形がないもので時間が経っても廃れない。その時代のバンドやツアー名が刻まれたTは希少価値でしかないし、音と一緒に聴いていた頃の出来事を思い出すことができる。高校時代、デビューしたてのハイロウズのツアーで買ったTシャツは、大好きだった『未成年』(95)というドラマとオーバーラップして、今でも甘酸っぱい気持ちになれるんです」
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いの・まさゆき>> 1979年群馬県生まれ。企業デザイナー、〈ミハラヤスヒロ〉の企画生産を経て、2012年〈doublet〉を設立。23AWパリメンズコレクションでは“MONSTER”をテーマにランウェイを発表。
Photo_Kaho Okazaki (SIGNO) Text: Naoko Sasaki