2024年3月5日(火)、〈ルイ・ヴィトン/LOUIS VUITTON〉の2024年秋冬ウィメンズコレクションが発表された。ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquière)がアーティスティック・ディレクター就任後に初めてショーを行った日からちょうど10年。ランウェイには、未来への希望と挑戦とが輝いていた。
〈ルイ・ヴィトン〉24年秋冬ショーに見る未来への道標
10年目を迎えたニコラ・ジェスキエールの旅の軌跡とは

パリ、ルーヴル美術館の中庭クール・カレ。〈ルイ・ヴィトン〉ショー会場では、大きな球状のオブジェが銀色の光を放っている。仏ミュージシャンのフラヴィアン・ベルジェの曲が流れはじめ、前衛的ながら郷愁を秘めた音が空間を満たす。宇宙船の中に迷い込んだような心地になっていると、真っ白なジャケットのルックでショーが幕を開けた。

カラーパレットは、白からグレー、シルバー、黒、ときにブラウン。そして所々に差し込まれる柔らかなグリーンや水色。ミニ丈がつくるシルエットや構築的なジャケット、刺繍など、ニコラ・ジェスキエールが10年間で探究してきたさまざまな様式がランウェイに現れた。その中で、ふわふわのグローブや猫耳キャップといった小物が軽妙にアクセントを加えている。
2014年の3月5日、同じこの場所で、ニコラが手がける〈ルイ・ヴィトン〉が初めて世に出された。それから10年、モードとそれを取り巻く世界は多くの変化を経験してきた。スタイルの多様化・個人化が進み、持続可能性への意識も高まり続けている。「ファッション」の在り方自体も、かつてないほど問われている。そんな中でニコラが自らの旅路の行方を示したのが、本コレクションだろう。
現代美術家フィリップ・パレーノとデザイナーのジェームズ・チンランドが手がけた会場装飾は、夜空に浮かぶ北極星をイメージしてもいるのだという。北極星は、コンパスを持たない旅人に正しい進路を告げる存在。旅行鞄をルーツとする〈ルイ・ヴィトン〉において、「旅」はもっとも身近で中核にあるコンセプト。ニコラにとっても、〈ルイ・ヴィトン〉での歩みは壮大な冒険だ。さまざまな進化を重ねつつも、ニコラの目は常に自身の"北極星"を捉えていた。彼のクリエイションを特徴づける、ファッションを身体のための建築的営みと捉えるアプローチ。それは10年間一貫しており、今、さらに研ぎ澄まされている。今回のランウェイを彩った斬新なカッティングや素材のミックスマッチも、その証左だ。
コレクションでは、バッグなどの小物にも、これまでの道のりへのオマージュと取れるようなデザインも見られた。ミニマムなたたずまいのシューズからは、いっそう強くモダンな女性像が感じられる。
10年間を振り返りながら、道標を再確認した今回のショー。ニコラが続ける旅路の先にはきっと、新しい未来が待っている。金銀の光に包まれた会場で、そんな希望が瞬いていた。
当日は世界中からスタイルアイコンが集い、アニバーサリーの喜びを分かち合った。
ブランドの世界観をそれぞれに表現する俳優やミュージシャンの着こなしを見るのも、ファッションがくれる楽しみの一つだ。
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Text_Motoko KUROKI