パリからやってきたシェフが
日本の食材を自由かつ巧みにアレンジ
フランス人の母とスペイン人の父を持つシェフ、オリヴィエ・ガルシアさんの料理には自由な発想があふれている。フランス料理ならではの伝統的な技法を用いて、日本の山海の幸を慈しむように生み出される品々は繊細かつ大胆。例えば前菜の「蕪のタルトタタン」は、バターでこっくりとローストした蕪をミルフィール状に重ね、上にはすりつぶした茎、タルト生地に皮や葉を練り込んでひとつの野菜を余すことなく活用。自家製ブリオッシュには魚のあら出汁を練り込んでいたり。フランス定番の米のデザート「リ・オレ」は、甘酒で煮た米、ポン菓子、日本酒のジュレ、スペインの米飲料「オルチャータ」などを組み合わせた新感覚の一皿に。日本で出合った食材やその生産者からひらめきを得て、「ありのままの素材の風合いを生かし、余すところなく使い切る」という想いに裏付けられている。ちなみに発酵文化にもご執心なオリヴィエさん。「キムチや鯖の魚醬、農家で分けてもらったふぞろいの果実や野菜でさまざまな発酵食品に挑戦中。どんなふうにメニューインするかは、まだ決めてないけどね」と、キッチンの棚には瓶がずらり。フロアを切り盛りするのはパートナーの髙遠菜都子さん。モダンさと和やかな雰囲気に包まれたこの店には、二人の美意識と人柄が存分に詰まっている。