さまざまなフィールドで活躍する、新進気鋭のクリエイターにインタビュー。その独創的な発想力と、人を惹きつける魅力とは?創造の源に迫る。
クリエイティブグループ〈Madhappy〉にインタビュー
シーンを塗り替える表現者たちvol.02
Madhappy
クリエイティブグループ
メンタルヘルスに
明るく楽しく向き合いたい

「人生にはいい時も悪い時もあるのが当たり前。どんな場合だって気楽に捉え、人間として豊かに生きていくことを祝おう」(ノア)
自身のファッションブランドをはじめ、さまざまな媒体を通じて、何事も悩みすぎず、いい方向へ向かうと信じる楽観主義を提案する〈マッドハッピー〉。2017年にロサンゼルスで創設されて以来、彼らはメンタルヘルスへのネガティブな先入観の軽減を掲げている。立ち上げメンバーのノア・ラフさん(中)とメーソン・スペクターさん(右)、アートディレクターとして仲間に加わったエド・デイヴィスさん(左)に話を聞いた。
「きっかけはとても個人的なこと。僕もノアも大学を中退し、将来何をしていいのか全然分からずにいた時に悩んで生まれたアイデアなんです。メンタルヘルスというとシリアスに捉えられがちだけれど、実は誰しもが毎日の生活の中で直面する問題とも言えます。だから、もっとカジュアルに話して理解を深め、皆で一緒に取り組みたい」(メーソン)
アパレル製品のデザインに前向きなメッセージを込めたり、手がける雑誌『Local Optimist』で心の健康をテーマにしたり。ポッドキャストでは、自殺防止対策ホットラインを曲名に用いたラッパーがゲストとして登場した。こうしたアクションが多くの人々の共感を呼び、わずか数年の間に社会的なムーブメントを巻き起こした。
主なツールとして洋服を選んだのは、彼らがファッションの持つポジティブな力を信じているから。
「毎日、必ず身につけるものだし、単純に新しい服を着て鏡の前に立つと、とてもいい気分になる。どんなふうに着こなそう?と考えるだけでワクワクしますよね」(メーソン)
「ファッションの広告やアンバサダーの写真は人が目にしやすいものだから、世の中に届くという利点もある。〈マッドハッピー〉を身につけてくれている方は僕らの考えに共感し、広めてくれる仲間です」(ノア)
フリースやスウェット、Tシャツなどのカジュアルウェアがコレクションの中心となる。そのどれもが年齢や性別、体型を限定しないユニバーサルなデザインだ。
「まず、一番大切なのは着心地のよさと親しみやすさ。そして、カラフルな色やポップなグラフィックで、心にまつわる明るいメッセージを伝えること」(ノア)
今回の東京進出に際して作られた限定アイテムも然りだ。
「テーマはずばり、〝ポジティブと東京〟。まずは己を知り、他人のために自分は何ができるのか考えよう、そして今取り組んでいることを続けようという意味合いを込めました。信念や前向きな言葉は口に出して伝えようというデザインの服もある」(エド)
彼らにとって初の海外進出に東京を選んだのは、とても自然な流れだったと3人が口をそろえる。
「日本にはたくさんのカスタマーがいたので、ビジネス的要素ももちろんあるけれど、何度か来日しているうちに街も人もすごく好きになり、素晴らしい時間を過ごしたんです。ヨーロッパよりも先に東京だ!とスムーズに決まりました」(ノア)
「僕は東京の人と公園に惹かれた」とメーソンが言えば、「インスパイアされるデザインが街中にあふれているところかな」とエドが続ける。
23年10月の来日はドーバー ストリート マーケットでのポップアップストア開設のほかに、エドいわく「ブランドの世界観はもちろんのこと、新しいアーティストを東京で紹介したかった」との理由から、原宿でシルクスクリーンの展覧会『B2 TOKYO』も開催。彼らの活動に共感する若者たちが多く集い、そこには早くも〈マッドハッピー〉の新しいコミュニティが確かに出現していた。
「次は拠点であるロサンゼルスに新しい路面店ができます。これからもさまざまな場所に実店舗を増やし、その土地に合うイベントを行いたい。コツコツ続けて10年後には世界中の人たちにとって、心のケアが当たり前になることへつながるように」(メーソン)
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Madhappy
マッドハッピー>> ペイマン・ラフとノア・ラフ兄弟、友人のメーソン・スペクターらが2017年にロサンゼルスで立ち上げたライフスタイルブランド。オプティミズムを軸にアパレルの販売や雑誌、ポッドキャスト配信を行っている。
Photo_Miyu Yasuda Text_Kaori Watanabe