高橋ひとみ
曲名♪キューティハニー
酔っ払うとみゆきが降臨する。 お別れできない彼女の正体とは?
「私、カラオケが苦手なんですよ」
誰にだってカラオケに行ったら必ず歌う1曲、すなわち〝オハコ〟があるはず。でもって、その曲が〝オハコ〟となるまでにはいろんな歴史やら物語やらがあるはず。その辺のサムシングを、今『ギンザ』が気になる女性たちに語っていただこうというこの新連載……のはずが、初回ゲストである高橋ひとみさんへの取材は、いきなり企画の存続を脅かしかねないそんな発言から幕を開けた。不安に駆られる我々をよそに、高橋さんは続けて言う。
「でも、お酒を飲んだら別。私、酔っ払うとみゆきっていう別人格が現れるんですよ(笑)。彼女はむしろカラオケが大好き」
急転直下、カラオケと親和性の高そうな話題に突入して安心すると同時に、新キャラの登場で心をかき乱される取材陣。み、みゆき?聞けば、彼女の生存が確認されたのは、高橋克実さんらと食事をしていたときのことだった。
「酔った私がいきなり『私はみゆきよ!』って言ったらしくて。翌朝はそのときのことを覚えてないから、ブルーな気持ちでみなさんに謝罪の電話をするんですけど、その噂を聞きつけた人たちが、みゆきを見たいからってまた飲み会に呼ぶんですよ。だいたいワインを3杯飲んだ辺りから彼女が現れ始めて、4杯目でジントニックを飲んだらもうダメ(笑)。『カラオケ行こ行こ!』って言い出すみたいです」
奥ゆかしい印象のA面とはまるで異なる高橋さんのB面にド肝を抜かれつつ、聞きたいことはひとつ。そう、カラオケクイーンに豹変した高橋さんの〝オハコ〟だ。
「倖田來未さんの『キューティーハニー』ですかね。昔、古谷一行さんや泉谷しげるさんたちと、ある番組の打ち上げでカラオケに行ったんですよ。そしたら、先輩たちが率先して歌ってくれて、しかもとてもお上手だったんです。そのときは先輩方の手前、お酒は控えていましたけど、私も1曲くらい歌える歌があるといいなって思って。それで帰宅後、お友達と近所のカラオケに通って歌える歌を見つけていたときに、たどり着いたなかの1曲が『キューティーハニー』でした。他には、青春時代のアイドルソングや昔に見ていたアニメの主題歌も歌いますが、最近の曲は覚えられなくて(笑)。『キューティーハニーF』がアニメ放映されていたときは既に大人でしたけど、もちろん知ってはいました。それで、倖田來未さんがカバーしたのを機にあらためて聴いて、いい曲だなって」
意外すぎる。もっとしっとりめのバラードを選ぶのだろうと思っていたので、この選曲には驚きを隠せない。
「私ってそういうイメージがあるみたいですね。みなさん『え、高橋さんがキューティーハニー!? 』ってびっくりされます。でも、カラオケの最初のほうってみんな照れて歌わないじゃないですか。だから、私がこれを一発決めて、場を盛り上げたいって思いもあるんですよ。振り付けですか?私、踊りの才能が一切ないんですよ。だから、そこはオリジナルのダンスです。ひとみは体力がないんですけど、みゆきは体力が有り余っているので(笑)」
ここまでくると、ぜひ一度みゆきのご尊顔を拝してみたいと思うのが人情だろう。しかし、みゆきは必ずしもポジティブな存在ではないらしい。
「この前、番組のロケで地方の神社に行ったんですね。そこで『捨てたいもの』を書いた紙を川に流して水に溶かすということをやったんですよ。もちろん、私が書いたのはみゆき。でも、『絶対に溶けますから』って言われたのに、いつまで経っても全然溶けなくて(笑)。こんなにみゆきは私から離れたくないのかって怖くなりました。できれば、彼女とは早くお別れしたいんですけど……。まだまだできそうにありませんね(笑)」
「キューティーハニー」/作詞=クロード・Q/作曲=渡辺岳夫/歌=倖田來未