平成元年生まれのオタク女子4人組からなるグループ「劇団雌猫」が、オタク心を持つアラサー読者の日頃の悩みをズバっと解決。応募フォームに集まった人生相談にメンバーである、かんさん、ひらりささん、もぐもぐさん、ユッケさんが月替わりで回答します。前回のお悩みはこちら。
天職なんて本当にあるの?「仕事が楽しい」の本当の意味【劇団雌猫 愛と浪費のおなやみ劇場 vol.4】
質問
今月の悪友:wankokawaiiさん
「私は毎日ただ何となく仕事をして、大きな不満はなく生きていますが、“仕事が楽しい!”と言っている人のキラキラした目を見ると胸が痛くなります。やってみたいことや興味のあることは沢山あるけれど、これだ!という確信が持てずなかなか一歩踏み出せません。自分のやりたいこと・好きなこと・得意なこと、どれが天職なのでしょうか。」
劇団雌猫からのアドバイス
今月の回答者:かんさん、もぐもぐさん
かん 今回は、もぐもぐとかんがお送りします。「天職」か〜!もぐもぐさんは自分の今の仕事が天職かどうか考えたことある?
もぐもぐ 私はWeb業界で働いているけど、わりと向いてるな~と思う。天職と言ってもいい気もするな。でも、めちゃくちゃ好きかって言われるとそんなことないし、働かずに生きていけるなら当然働きたくない!(笑)
かん へー!ということは、もぐもぐさんにとって天職は得意なことってイメージ?
もぐもぐ そうだなぁ、「やりたいことやれてる」っていうより「働いててストレスがない」って感じかな? 自分の能力と仕事で求められることのバランスがちょうどいいなって思う。
かん なるほどね。私は新卒からいろんな職種についたけど、何してても天職だと思えたことないなぁ……。
もぐもぐ そうなんだ!わりといつも楽しそうに働いてるイメージだった。
かん どの仕事でもそれぞれに少しずつ楽しさは見いだせてると思うんだけど、この世にやったことない仕事の方が多すぎて、やったことある数少ない仕事の中で早々に天職を決めるのがもったいない気がして。
もぐもぐ 天職って言葉のハードルが高いタイプ!まあ、そう言われるとそうだね。
かん あと50年間くらい働く中で、もっとヤバい爆上げな仕事と出合うかもなという期待をしてる。
もぐもぐ 壮大なスケジュール感いいね、確かにいくらでも選択肢はある。それにしても天職って人によって捉え方がすごく変わりそうな言葉だ。そもそも仕事を人生においてどれくらいの比重で考えるかも人によるもんね。
かん wankokawaiiさんは、仕事が自分のやりたいこととぴったりで楽しい!のが「天職」だと考えているんだね。
もぐもぐ 周りの「仕事楽しい!」な人が目につくのかな?身近にそういう人がいるから胸が痛くなるんだろうけど、そうじゃない人のほうが多分…というか絶対多いし、自分だけがおかしいわけじゃないから、まず劣等感は持たないでほしい!
かん 仕事を「良い」とする要素って、楽しいとかやりたい以外にも、お給料とか自由になる時間とか、係数が色々あるよね。どのバランスがベストかは人それぞれ。
もぐもぐ いや、ほんとそうだよね。めちゃくちゃ好きで楽しくても、激務で身体壊したら元も子もないし。
かん 周りにもたくさんいるね、好きな業界でがむしゃらに働いて3年で休職コース。ウッ……。
もぐもぐ 何人も思いつくよね、エンタメ系とかコンサルとか……。そういう意味だと持続可能性があるほうが「天職」かもしれないしね。自分の周りを見てると、仕事に対して夢や理想がしっかりあった子ほど、突然折れてしまう感じがする。
かん なりたい自分像がある人ってことなのかな。
もぐもぐ 理想の自分とギャップが生まれちゃうのかも。
かん 終身雇用も崩壊しているし、柔軟に対応していける人ほど強いなっていうのは身にしみて感じるね。
もぐもぐ お悩み内容に「やってみたいことや興味のあることはたくさんあるけど」って書いてあるけど、ここすごくいいな~!と私は思った。
かん めっちゃすてきだよね。
もぐもぐ 最初から「天職見つけよう!」と思うと超ハードル高いじゃん?いきなり仕事にしようと思わずに、興味がある分野の専門書読んでみるとか、働きながら学べる場所に通ってみるとか、こっそりバレない程度に憧れの業界でバイトするとか、ちょっとやってみたら「一歩踏み出せない」悩みは晴れるかも。まずは少しかじってみて、これはいけそうと思ったら本格的にやってみればいいわけだし。
かん 今の時代、ひとつの会社で同じ仕事をずっと続ける可能性のほうが低いと思うし、選択肢を広げておくのはすごく良いよね。むしろ、今の仕事を天職だと思い込んでる人の方がやや危険だと思う。
もぐもぐ 危険!それはどういう意味で?
かん 最初に話した私の思う「天職」にも通ずる話なんだけど、まだ20~30歳そこそこで「これが私の天職なんだ!」って言い切ったとしても、死ぬまでそれを貫いてやれる人ってオノヨーコさんとか樹木希林さんとかレベルの人だと思うんだよ……。
もぐもぐ 比較対象が大御所すぎる(笑)。でもそうだよね、結局、自分が知ってる狭い世界の中で選んでるだけだもんなあ。就活とかまさに。
かん 思い込んでしまっていると、環境の変化で自分が変わらざるを得なくなった時に受け入れられなかったりして、「折れる」のかなって。
もぐもぐ 自分で「これが天職だ」と思い込むことで、キャリアチェンジするチャンスを逃しちゃうことだってあるだろうしね。
かん キャリア変えるのとか途切れるのって正直怖いし、今見えてる範囲内で得意っぽいことだけやってたいんだけど、横道に逸れたからこそ今の仕事、あるいは前の仕事が天職だったんだって分かる可能性もあるなって!キャリアチェンジした側が天職の可能性ももちろんあって、どっちに転んでも得じゃない?
もぐもぐ うんうん、比較は大事だよね。私も新卒で入った会社で最初にまかされたのはエクセルで細かく数字を管理する仕事で、今考えると全然向いてなかったな。当時はそれすらわかんなかったけど(笑)。部署異動して初めて「あ、あれ向いてなかったんだな〜…」って分かったよ。もちろんその時はできる限り頑張ってたけど、違う仕事をしてみて分かる相対的な“偏差値”がある。
かん 他の経験をしてみないと基準が持てないよね。私は営業の仕事が「好きではないけど得意だと言われる仕事」だったので、それを副業にしてたことがあるよ。副業なら迷惑のかからない範囲でサッと辞められるから安心感がある!
もぐもぐ 大失敗しない程度のトライ・アンド・エラーをしていくとwankokawaiiさんが思う「天職」の輪郭が見えてくる気がします!
かん 「やりたいこと・好きなこと・得意なこと どれが天職なのでしょうか」という質問に対してですが、「やりたいことはやりがい搾取されそう、好きなことは嫌いになっちゃいそう、得意なことばかりだと飽きそう」みたいなそれぞれのネガティブポイントもあると思うんです。
もぐもぐ 本当はどれか1個を選ぶゲームじゃないんだよね。自分にとっていいバランスを考えていくと、それが天職になるのではないでしょうか。
かん 仕事以外の、趣味やプライベートの時間・お金含めて考えると自分にぴったりの天職が決められそうだね。
もぐもぐ 公私混同して好きなものの側で働くのが幸せ!って人もいるけど、仕事は仕事でお金を稼ぐためとわりきって趣味に生きたほうが精神安定する人もいるし。
かん まさに私たちの新刊『本業はオタクです。-シュミも楽しむあの人の仕事術』の話だ!いろんなスタンスのオタク女性たちに仕事と趣味の関係を聞いているので、よかったら読んでみてください~!
『本業はオタクです。-シュミも楽しむあの人の仕事術』
劇団雌猫 著
中央公論新社
本体1300円(税別)
7月22日前後に発売予定
「いつもオタク現場にいるあの人、一体なんの仕事をしているんだろう?」『浪費図鑑』でおなじみの劇団雌猫が、日々趣味と仕事の両方にいそしむオタク女子たちにインタビュー。
☆次回はひらりさ・ユッケが登場します☆
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