深い思いやりと行動をもって、仕事に向き合う人。相手と接する際の意識と姿勢から、学ぶべきマナーが見えてくる。
ホテルコンシェルジュに教わるホスピタリティ【仕事で活きる、心遣いのティップス】
ホテルコンシェルジュ
金澤安奈
「The Okura Tokyo」シニアコンシェルジュ
耳と目と心で話を聞くことで
相手の真意を引き出す
「もっとも大切にしているのは〝傾聴〟と〝観察〟です」
おいしいレストランの情報提供と予約から、散策ルートの案内まで。ホテルの知恵袋として宿泊客が頼りにするのが、コンシェルジュだ。質問内容は多岐にわたり、予測も不可能。ゆえに思いやりと対応力が求められる。1962年の創業以来、国内外から多くのゲストを迎える「The Okura Tokyo(旧: ホテルオークラ東京)」で、2017年よりコンシェルジュを務める金澤安奈さんに極意をたずねた。
「来日中の男性より『日本人女性を褒める言葉を教えてほしい』という相談を受けました。ビジネスの場で出会った方の仕事ぶりに心を打たれたので、感謝を表す意味として、素敵な言葉を贈りたくなったそうなんです。褒めたいと思った背景を知り提案をしたのは『聡明ですね』というフレーズです。『物事の理解が早く賢い人のことをそういう風に言います』という説明も加えました」
柔和な笑みと澄んだ声で相手を優しく包み込む。金澤さんに相談をしたら万事OKになりそうな安心感が漂っている。
「お客さまの疑問に私も鍛えられているんですよ。最近、外国に住む女性から『東京でのトランジットの合間に日本にいる恋人と会うのはどうすればいい?』という電話を受けたんです。飛行機の到着時間と乗り継ぎまでの猶予を確認したうえで、入国審査とPCR検査を受ける必要がある旨をお伝えしました。コロナ禍ならではの質問でしたので、こちらも引き出しを増やすいい経験となりましたね」
トラブルに直面し、混乱の中にいると要点をうまく伝えられない場合も多い。どのように解決へと導くのだろうか。
「一緒にポイントを整理します。ご自身では気づかなかった点を穴埋めしていくのが私の任務でもあるので、プランBを提示して選択肢の幅を広げます。わからないことはその場しのぎでお答えせず、正直に『確認させてください』と伝える時もありますよ。そうして最善とセカンドベストまでそろえてお戻しをするようにしています」
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金澤安奈
2005年「ホテルオークラ東京」へ入社と同時に宿泊部へ配属。電話交換手を経て現部署へ。2020年からシニアコンシェルジュとなる。