初夏の足音が聞こえてきたら、旅に出たくなる。5月16日は松尾芭蕉がおくの細道へ出発したとされる”旅の日”。編集部員それぞれの旅の形をリレーでお届けします。5人目は──
FROM EDITORS 初夏の旅 Spring Water, Early Summer

Early Summer Trip 5
旅といえば島である。
超私的・伊豆七島ランキングTOP3(いずれも異論は認める)。
1位 神津島
2位 八丈島
3位 三宅島
まずあらかじめ断っておくと、東京の離島は全て最高である。
ではなぜ、神津島が1位なのか。それは湧き水のうまさの分、ほんの少しだけ他より勝ったということだ。伊豆諸島には、神津島以外にも水の湧いている島がいくつかあるが、中でも水質、ロケーション共に大好きなのが、神津の「多幸湧水」だ。ネーミングからしてありがたいこの泉は、島の東側に位置する多幸湾というビーチの脇にある。この浜がまた美しく、砂は白く、海はコバルトブルーに輝き、浜の奥には天上山の斜面がそのまま波打ち際になだれ込む、そんな眺望だ。その景色を眺めながら飲む冷たい水のうまさたるや。水筒やペットボトルに拝借して帰り、沈みゆく夕暮れを肴に島の名酒「盛若」の水割りを飲む。まろやかだ。もう何もいうことはない。島の中でも随一の湧水である。
多幸湾と天上山。
上)飲料水用の汲み場からこんこんと湧き出続ける水。 下)島民の方々の生活水であり、浜の漁師さんがテングサを洗っていたりするので、挨拶をしつつ、分けてもらう気持ちで。お邪魔しますの精神が肝要である。
島では何もしない時間がとても大切だと思っている。綺麗な海でスノーケリングやダイビングをするもよし、天上山をトレッキングや散歩、キャンプだっていい。だが、ぼーっと過ごすことが最大の贅沢な気がしてしょうがない。ちなみに、水着を着用して入る海沿いの露天温泉で夕日を眺めつつ浸る、というのもめちゃいい。
神津島温泉保養センターの露天温泉。泉質はナトリウム塩化物強塩泉でまあまあしょっぱい。島の西側、三浦港にある待合所「まっちゃーれセンター」で前売り券を買うとちょっと安く入れるよ。
キャンプ場も3つあり、うち2つが無料。こちらはその1つ、沢尻キャンプ場。奥のリゾートホテル跡地がいい味出してる。
商店街にて。ゆっくりと島を散歩するのもオツ。
島というとややハードルが高く感じるかもしれないが、東京から週末で全然行けてしまう。大型客船だと23時に竹芝桟橋を出発、船で寝ていれば、朝9時頃に島に着く。ジェット船も運行があり、東京・竹芝~神津間は4時間程度。満席の場合は神津~熱海間のジェット船(片道2時間程度)に乗り、熱海〜東京間は新幹線(40分弱)、という手も。どのルートも片道だいたい1万円あれば十分だ。船上の時間ってのは旅情を誘う。例えば金曜の23時の大型船で出発、デッキで軽く一杯やって船を満喫、寝る。土日で観光して、日曜の昼過ぎのジェット船で熱海へ渡り、ちょっと観光、新幹線で東京へなんてのがちょうどいい。熱海を経由することで、島から唐突に東京の喧騒に引き戻されるショックが和らぐ、気がする(個人的感想)。
東海汽船の大型船、さるびあ丸。色々な等級の席があり、個室も。デッキも気持ちがいい
ジェット船で帰って来た熱海港。駅までの間にあるレトロな商店街で一息入れたり、土産物屋で「天使のえび」の干物を買ったり、楽しい街。
熱海港から熱海駅までの間で見かけた階段。島と全然関係ないけどすごい。
またすぐ行きたいわ〜、神津島!
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Daisuke IWABUCHI
TARZAN、POPEYE編集部を経て、2018年6月号からGINZA編集部に参加。女性ファッションのムードを勉強しながら、スピアフィッシングを日本に広めるべく草の根活動中。