家族、友人、パートナーなど、誰かと一緒に住んでいる人にとって「家事の分担」は身近なトピック。習慣化されていて無意識に日々を過ごしてしまいがちだけれど、家事の分担が「家での平等」につながる社会課題かもしれないとしたら?遊び心溢れる住空間アイテムをいつも提供してくれるスウェーデン発祥のイケアが、そんな普段の家での暮らしを見つめ直すシンポジウムを開催した。
8月1日「やっぱり家の日」にイケアと考えた家での平等。
イベントが行われた8月1日は、2010年にイケア・ジャパンが登録した「やっぱり家の日」。「やっぱり家が好き」と感じられるよう、家での暮らし方を振り返ってほしいという思いから作られた記念日で、今回、イケアは2050年に向けた「家での平等」について考える取り組み「Life at Home 2050」も始動。家の中での平等が、社会における公平・平等にも繋がるという考えのもと、同じ志をもつ企業関係者や有識者、スウェーデン大使館など、産官学で理想の未来を実現するためのアクションを実施していく予定だ。
シンポジウムでは、ヨハンナ・リンドクイスト駐日スウェーデン臨時代理大使や、ジェンダー課題を専門とする東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の治部れんげ准教授、また「Life at Home 2050」に向けたワークショップに参加した企業関係者やイケア・ジャパンの社員が登壇。他の先進国に比べ日本は女性の家事の負担が圧倒的に多く、女性が社会でより活躍するためには家の中での男性の力が不可欠なことや、ジェンダー平等はキャリアの選択や柔軟な働き方につながるなど男性にとってもメリットが大きい点などが語られた。
イケア・ジャパン代表取締役社長ペトラ・ファーレさんには個別でもお話を伺った。「私たちは、社会のポジティブな変化の実現は、職場、そして何よりもまずは家の中から始まると考えています。イケア・ジャパンでは、管理職の男女比は1:1で、同一労働・同一賃金も実現し、男女共に育児休暇取得も定着していますが、ジェンダー平等という社会課題に取り組むには、一企業だけではなく、さまざまなステークホルダーと協働して取り組む必要があり、今後もさらに多くの方々に『Life at Home 2050』にご参画いただき、一緒に取り組みたいと考えています」と「Life at Home 2050」を立ち上げた背景について教えてもらった。
また、個人が「家での平等」を実現する第一歩として、家庭内での家事分担はどんな工夫をしているのかペトラさんに質問。その中ですぐに取り入れたいと思ったのは「作業量の可視化」。「職場では皆上手く配分できるのに家になると途端に難しくなるんです」とペトラさん。たしかに家庭だとなんとなく分担をしているけれど、お互いの仕事を書き出し、冷蔵庫など頻繁に見るところに貼っておけば、役割がはっきりするし、相手への感謝の気持ちも忘れずに家事を円満に手分けできるはず。
ジェンダー・ギャップ指数(※)のスコアを見ても5位を維持するスウェーデンは118位の日本に比べジェンダー平等が進んでいるけれど、「政治の場での格差はほとんどないですが、民間企業の役員比率や家事負担の不平等など、まだまだ改善点はあります」とペトラさん。スウェーデンでもまだ課題があるのだから、日本はなおさら。「日本のジェンダー平等がいつかスウェーデンを超えてほしいと思っています。『2050年、家での暮らしをどうしたいだろう?』とぜひ考えてください」という言葉を受け、今の日本は国会議員や管理職の数など男性が圧倒的に多いけれど、リーダーシップを発揮する場に女性が増えるといいな、と理想の未来を想像した。
※世界経済フォーラムが毎年実施している。
Photo_Yuki Sonoyama Text_Eri Machida