GINZAが今、気になる2人。女優の服部樹咲とシンガーソングライターのao。初対面の緊張が解れていく、その過程を覗き見。
15歳の初対面。女優・服部樹咲とシンガーソングライター・aoのダイアログ

みずみずしい美しさに、どこか切なさが含まれている服部樹咲さんの演技。実体験に基づいた素直な歌詞と印象的な歌声に、ひと匙の〝ダーク〟を加えたaoさんの楽曲。フィールドは違えど、表現という点で2人は同じアーティスト。彼女たちのつながりを、彼女たちの言葉から探ってみる。
服部 はじめまして。女優の服部樹咲です。
ao シンガーソングライターのaoです。どうしよう、なんだか恥ずかしいですね。
服部 本当に(笑)。仕事で同い年の、それもアーティストの方と会うことが本当に珍しくて不思議な感じがします。ワクワクと緊張が混ざってる。敬語が少し苦手なので、なおさらドキドキしちゃう。
ao じゃあ、タメ口でお話ししてみましょう。私もその方がきっと楽なはず。
服部 そうしよう、まだ少しぎこちないけれど……。aoさんの楽曲は以前から聴いていて、とてもカッコいいなと思っていたんです。ハスキーな歌声が心地よくて。
ao ありがとう。
服部 そして、作詞作曲をすべて自分でやっているのが本当にすごいって思って。私、昔から曲作りができる人を尊敬しているんです。何もかもゼロから考えなきゃいけないでしょう?私の頭の中では、まったく想像もできない。
ao 私自身も、最初は曲を作ることなんて考えもしてなかった。ピアノは4歳から習っていたから、音楽は身近にあったんだけど。きっかけを与えてくれたのは、お母さん。「平成最後の夏に、なにかやってみる?」って、今の事務所に入るためのオーディションを見つけてくれて。歌に興味を持ち始めたばかりで、力試ししてみようと参加してみたら、受かってスクールに通うことに。そこで、DTMを勉強して。
服部 DTMって?
ao PCひとつで音楽が作れちゃう魔法のツール。わたしは「Logic Pro」ってソフトを使ってる。メロディをキーボードで取り込んで、いろんな楽器やエフェクトを重ねると曲が仕上がるんだけど、一言で伝えるのが難しいぐらい、複雑なんだよね。スクールに通い始めたときは、すでに周りのみんながDTMを使っていて、遅めのスタートだった。その頃、ウクレレで曲を作っていたのは私1人だったから(笑)。
服部 それで受かるなんてさすが……。スキル以上に才能があったんだね。私も4歳でバレエを始めたから、シンパシーを感じる。
ao すごい偶然。バレエはどんなきっかけで習い始めたの?
服部 夏休みの盆踊り大会で踊っていたとき、お母さんが「指先がきれいだね。バレエ始めてみたら?」って褒めてくれて。ちょうどそのとき、家の近くにバレエ教室ができたっていう縁もあって、通うようになったの。それから11年間続けてる。
ao だから映画『ミッドナイトスワン』でもカッコよく踊れてたんだ。わたしたち2人とも、お母さんがきっかけだったんだね。
服部 だね。バレエを習っていたときは大変だったんだけど、でもレッスンがない日はなぜか憂鬱で。毎日やっていたいって思ってた。だから、自分が出演する作品の大切な要素だったのがうれしくて。
ao 『ミッドナイトスワン』の一果役はどうやって決まったの?
服部 ドラマを観ていて「自分だったらこう演じるなあ」って思うことが何度かあって。それで沸々と、女優になってみたいって気持ちが増していったのかな。そんなとき知り合いから『ミッドナイトスワン』のオーディションがあるって教えてもらって。条件は、バレエ経験者で中学生役ができる人。演技未経験でもOK。「私だ!」と思って、すぐに応募した。初めての挑戦だったけど、好きなバレエと一緒だったから、自信を持って参加できた。
ao ピッタリだったんだ。でも演じることってすごく難しそう。
服部 って思っていたんだけど、実際はとても素だったかもしれない。泣き叫ぶ演技は、内田英治監督と一緒に練習したり。撮影の休憩中にぼーっとしていたら、監督に「そのままの表情で演技して!」って言われることもあったし(笑)。
ao それはすごいね。
服部 でもバレエのラストシーンはすごく大変だった。実は、それ以外の演技パートは、中1の秋に1カ月で撮っていて。最後の撮影まで、半年ぐらい間が空いたかな。撮影期間中で7㎝も身長が伸びた。その間、ずっとバレエの練習の毎日。踊ったことがないオデットのヴァリエーションだったから、難しくて。演じ終わったときは達成感がすごかった。
ao そんなに時間がかかってたんだね!
服部 そうなんです。でもそれこそ、曲作りも結構時間がかかるイメージ。
ao 浮かぶまでは時間が必要だけど、決まってからは早いかな。たとえば、鼻歌でなんとなくのメロディが作れたら、キーボードでソフトに音を打ち込む。歌詞はそれから。ワンフレーズだと、30分ぐらいで完成する。
服部 え、30分で?
ao ワンフレーズの歌詞だけだよ。
服部 絶対早いよ。その速さで仕上げるってすごすぎる。いつも何を考えて書いているの?
ao うーん……。友達と喧嘩したこととかかな(笑)。そういうときほど、言葉がバーッと出てくる。どの曲も、実体験をもとに書いてるんだけど、小さな出来事からどんどん膨らませていって、大きなテーマにしていくイメージ。
服部 カッコいいなあ。私は歌うことは好きだけど、作る才能はないと思う。
ao 作ってみないとわからないよ。歌声、とても気になる。
服部 じゃあ、いつか披露できたら(笑)。高校では軽音楽部に入ろうかなって思ってる。
ao 奇遇、私も!ギターとドラムをやりたい。
服部 私は楽器を弾ける自信がないからヴォーカルかな。普段はカラオケに行くのも好き。1人で。
ao 何を歌ったりするの?
服部 バラード系が多いかな。Superflyさんの「愛をこめて花束を」とか。頻繁にカラオケするわけじゃないけど、1回行き出したら止まらなくなって、週3回も通ったことがあるよ。
ao すごいね、私はあまり行かないかも。お風呂で歌うことはある。
服部 それも一緒(笑)。自分で歌うことはないけど、K-POPもよく聴くよ。
ao 私も大好き。どのグループが好き?
服部 BLACKPINKをよくチェックしているかな。
ao 私も同じく。最近は aespaもよく聴いてるよ。カリナが推し。
服部 かわいくてずっと見てられるよね。私はニンニンが好き!
ao ニンニンもかわいいよね。K-POPは曲の構成が面白い。J-POPだとAメロ、Bメロ、サビ〜って続いていくんだけど、K-POPはDメロぐらいまであって、すごく複雑に入り組んでて。 aespaみたいに、急に曲調が変わったり、不規則な感じがすごく面白い。
服部 聴いていて楽しくなるよね。あとは韓国ドラマのOSTは、ドラマの内容も重なって、切なくなったりいろんな感情があふれてくる。好きなのは『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』。
ao すごくわかる。ちょっと悲しくなるよね。でも、それがいい。
服部 ちなみに、洋楽でおすすめはある?最近英語を勉強したくて、たくさん聴きたいなと思っているところ。
ao ラウヴは聴きやすいかも。BTSとコラボレーションしたり、活動の幅が広いアーティスト。あとは、ジョニー・オーランドとか。
服部 ありがとう、早速聴いてみるね。でも、本当に意外なところで共通点があるね。いつの間にかタメ口も慣れてきたし。あ、あと聞きたいことがあったんだ。これからどんな曲を作ってみたいって思ってる?
ao 今まで続けていることは変わらず、でも、新しさも出していきたい。たとえば、影響を受けた映画や本から、自分の人生とつなげてみたり。いろいろと、たくさん挑戦したいって考えてるよ。樹咲ちゃんはどう?
服部 私は、人間関係を描いた作品にもっと出てみたいな。『ミッドナイトスワン』もだけど、演じる演じないの前に、第三者として惹き込まれる作品に携わっていきたいなって思ってる。私も映画や本にたくさん触れて、もっと勉強したい。
ao 次に会ったら、その話題でまた盛り上がりそう。楽しみにしてるね。
【写真1枚目】服部樹咲 ニットウェア ¥72,600、ドレス ¥455,400、ブーツ ¥137,500(以上メゾン マルジェラ | マルジェラ ジャパンクライアントサービス) ao シャツ ¥72,600、コート ¥335,500、スカート ¥369,600、シューズ ¥90,200
【写真2-7枚目】服部 シャツ ¥41,800、デニムワンピース ¥31,900、パンツ ¥39,600、サンダル ¥53,900(以上トーガ プルラ | トーガ 原宿店)/ソックス ¥2,310(オリジナル チャコール | チャコール トーキョー) ao ワンピース ¥90,200(イザベル マラン エトワール | イザベル マラン)/ソックス ¥2,310(オリジナル チャコール | チャコール トーキョー)/シューズ ¥15,400(ニューバランス | ニューバランスジャパンお客様相談室)
【写真8枚目】服部 シャツ ¥38,500(テラ | ジャーナル スタンダード 自由が丘店)/ドレス ¥91,300 ao ワンピース ¥66,000(以上マメ クロゴウチ | マメ クロゴウチ オンラインストア)
*年齢はGINZA2022年6月号掲載当時のものです
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服部樹咲
2006年生まれ。演技未経験ながら、映画『ミッドナイトスワン』のオーディションで数百人の中からヒロインの座を射止めた。第44回日本アカデミー賞・新人俳優賞をはじめ、複数の賞を受賞。『国際ファッション専門職大学』『docomo future project KAZE FILMS』のCMに出演。ファッション誌などでモデルの活動と幅を広げている。主演短編映画『おかあの羽衣』が配信中。2022年7月11日から放送のフジテレビ月9ドラマ『競争の番人』に出演。
Instagram → @misaki_hattttori
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ao
2006年生まれ。小学6年生の時に初めて出演したオーディションで、その才能を見出される。2021年9月、中学3年生15才の時に「Tag」でメジャーデビュー。2022年1月にSpotifyが選ぶ2022年に活躍を期待する次世代アーティスト「RADAR:Early Noise 2022」に選出される。2022年6月8日、最新曲『リップル』を発表した。
Instagram → @ao_official2006