ロンドンを拠点として活動する、ヘアデザイナーの小戸紀代子さんが気になるアーティストとコラボレーションし、その人らしさをヘアで表現。アーティストのバックボーンを探るインタビューとともにお届けします。
ヘアデザイナー小戸紀代子の“WHO ARE YOu ?” vol.9
小戸紀代子 × Molly@ロンドン
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Molly
モリー/デザイナー志望の学生
今回はイギリス出身のMollyさんにインタビューしてきました。Mollyさんは、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズでファッションを学んだ後、『Dover Street Market London』に勤務。長年経験を積み、今まさに新しい事に挑戦をしようとしている彼女。魅了され続けているというファッションは、彼女にとってどういう存在なのか?私は高校生の時、ストリートスナップの熱狂的なファンでした。Mollyさんに会うと、当時の自分がフラッシュバックします。あの頃、強く惹きつけられたカリスマ性をMollyさんから感じるのです。そんな彼女を深掘りしてきました。
まずは、幼少期の環境やファッションに興味を持ち始めたきっかけを教えてもらいました。お父さんは建築士。とてもアーティスティックで、家にはビー玉や古い看板、玩具の車などなど、いつも視界にはMollyさんを楽しませる物で溢れていたそうです。そういった影響もあり、どんどんクリエイティブな世界に引っ張られていき、小さい頃からビッグサイズのリボンをつけたり、とてつもなく大きなTシャツを好んで着たりとファッションとクリエイティビティを重ね、自然と自分のスタイルを築き上げていったようです。彼女は手で触って感じられる物に惹かれると言います。道を歩いていても壁をタッチしながら歩いちゃうくらい好きなようで、その延長線でテキスタイルを勉強したいと思い、セントラル・セント・マーチンズに通いだしたそうです。そこで〈コム デ ギャルソン〉と出合い、切りっ放しの布やユニークなシェイプやオーバーサイズなどなど、ブランドのデザイン哲学に魅了されてコレダ!!と確信。「裏表だったり上下が逆であったり、常識を破る自由な発想にシンパシーを感じました。自然と洋服を纏った自分に自信を持たせてくれて、パワーが湧き出てくる」そんなふうに話していました。この言葉が私の中でとても印象的でした。なぜなら自分も同じ気持ちになった事があるからです。中学生の時、上の階に住んでいた2つ上のお姉ちゃんがとてもオシャレで〈W.&.L.T.〉というブランドをよく着ていました。初めて彼女にそのブランドの服を着させてもらった時の衝撃は今でも忘れられません。一瞬で自分が何者かに変身したかのような気分になって、世界が一瞬にして広がった。あの経験がなかったら、もしかしたら私は今この仕事をしていないかもしれないと思うほどです。洋服の持っているパワーに初めて触れた日を思い出しました。
Photo&Text_KIYOKO ODO