ロンドンを拠点として活動する、ヘアデザイナー小戸紀代子さんの新連載がスタート。小戸さんが気になるアーティストとコラボし、その人らしさをヘアで表現します。アーティストのバックボーンを探るインタビューとともにお届け。
ヘアデザイナー小戸紀代子の“WHO ARE YOu ?” vol.2
小戸紀代子 x Xiaoqiao @ロンドン
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Xiaoqiao
キシャオ/中国出身。モデル・ミュージシャン
今月は、モデルでミュージシャンのⅩiaoさんにインタビューしました。
先日、ロンドンにある古い教会で演奏会が開かれました。私が着いた時には既に辺りは薄暗く、ゴシック調の黒い塀に囲まれた小さな建物にあるステンドグラスからボワ〜と光が漏れて、まるでティム バートンの世界でした。中に入ると古い木の香りと長い時代を見てきたであろうキリストの彫刻や宗教画がいっぱい。そんな神聖な場所に彼女のハープの潤った音色が響き渡り、時折不協和音も混ざりあう。舞台の床には貝殻が敷き詰められ、大きな模様が描かれている。彼女がときどき床に座りその大きな貝を使ってハープを奏でる姿にはゾクッとさせられて、何とも言えない心地よいミステリアスな世界に浸れたのでした。

次に、ヘアデザインについてです。彼女のイメージを言葉で伝えるとしたら”洞窟に住んでいそうな神聖な生き物“。そしてハープを弾いている姿は神話に出てくる女神を彷彿とさせて、今回のヘアデザインの鍵はそこに間違いなくあると感じました。そこで宗教画や神話を探っていると、そこには、お花や妖精、蝶々が多く登場していて、その中の蝶々にピンときました! 蝶々って奇麗だけど少し毒々しさも感じるところがⅩiaoさんと似ているな…。 演奏中に、頭にたくさんの蝶々が止まっていたらどうだろう?そして、その毒々しさを強調する為に触覚を長くし、彼女の髪色と同じ黒髪で作ろう!さらに、ヘアスタイルは女神さまのような柔らかいウェーブに。 そうしてアジア版女神様(天女様?) が完成。
蝶々をつけて舞台で演奏する彼女の姿は、私のイメージそのものでした!次回はもっと妖艶に、床まで届く長い髪の毛を作って、大量の蝶々を乗せて演奏してもらいたいと思っています!
私はいつも髪の毛を通して、その人の内面を覗かせてもらい、行ったことのない世界を擬似体験して帰って来る。ヘアーがきまって喜んで貰った時には、言葉で意思疎通できた時よりも、その人とコミュニケーションが完璧にとれた気がしちゃう。もっと色んな世界観を見てみたい!と今日も思いました。


Photo&Text: KIYOKO ODO