幼い頃から聴いている曲や生き方を教えてくれた曲。最近気になっているミュージシャンなど。2020年のいま、音楽を語る上で欠かせない敬愛するアーティストと好きな曲を聞きました。
アーティスト
Ben Howard
曲
「Old Pine」
幼い頃から聴いている曲や生き方を教えてくれた曲。最近気になっているミュージシャンなど。2020年のいま、音楽を語る上で欠かせない敬愛するアーティストと好きな曲を聞きました。
アーティスト
Ben Howard
曲
「Old Pine」
目を閉じると遠くに連れて行ってくれる
音の景色が無限大に広がっているんです
深く印象に残っている音楽はなぜかすべてUKミュージック。中でも大好きなアーティストが、コールドプレイ、エド・シーラン、そしてベン・ハワード。最初に出会ったのはコールドプレイで中学生の時。洋楽好きの友達が焼いてくれたMDの中に「クロックス」という曲が入っていて、目を閉じると景色が広がるような気がしました。「なんなんだ、これは ?」と気になって追いかけていたら『Viva La Vida』がリリースされて、「うわー超かっこいい !」と夢中になった。彼らの音楽を聴くとプラネタリウムの中にいるような感覚になるんです。クリス・マーティンが若干鼻声なんですけど、それがいい。声と言葉をメロディに逃がすというか、裏声などの表現で感情を揺さぶってくる。僕の1stアルバムはかなり影響されていると思います。
その後、カーレーサーを目指して、イギリスのシェフィールドという小さな町のチームに入って、語学の勉強をしながらホームステイをすることになったのですが、向こうでは常にラジオが流れていて。どんな場所にも音楽がありました。テスト中に先生が好きな曲をかけたり(笑)。エド・シーランに出会ったのもその頃です。2010年ぐらい、まだ彼がパブでライヴをしていた時期で、ラジオでも彼の曲がよく流れていました。怪我をしてレーサーを諦めなくてはならなくなり、落ち込んでいた時に、日本で彼のライヴをたまたま観る機会があって……運命でしたね。一人で汗だくになって観客を感動させる姿を見て、鳥肌が止まらなかった。それが音楽を始めるきっかけの一つになったんです。
ベン・ハワードは、UKミュージックを追っていくうちに出会ったアーティストで、直球のフォーク。僕は彼の声が大好きなんです。この「オールド・パイン」は明け方に聴いたりすると、とても心地よくて。10人が聴いて全員が好きになるのではなく、10人のうちの何人かが、10人以上の感情でとことん好きになるようなアーティスト。ライヴもすごい。お客さんを完全に置き去りにして自分の世界に入り込むのですが、そこにみんな引き込まれてしまう。しかも、マニアックなギタープレイヤーで、複雑なチューニングで難しいフレーズを弾くので、逆にもっと聴きたいと思わせる。「どんな頭をしてるんだろう ?」と思う(笑)。でも歌っていることはシンプル。ストーリーをたどっていくのではなく、感情の一部分を繰り返し歌ったりして、その違和感の虜になってしまうんです。一人で作り出す心の叫びや音の強さ。素晴らしいアーティストだと思います。コールドプレイとはスタイルは違うけれど、世界が無限に感じられるという部分では共通点もある。僕も彼らのように、目を閉じるとどこか他の場所に行けるようなサウンドを作りたくて、今でもずっと追いかけています。今度リリースする「フォーリン」は、クリスマスに向けた温かいラブソング。エレキギターで作った曲です。聴いてくれた人にも音の景色が広がるとうれしいです。
2011年にリリースされたEP『OLD PINE』のオープニングに収録。アコースティックなギターの弾き語りから始まる詩的な一曲。
ベン・ハワード>> ロンドン出身のシンガーソングライター。3rdアルバム『Noonday Dream』が全英TOP5入り。
1994年生まれ。2015年活動開始。2019年11月末よりワンマンツアーを開始。11月27日にEP『Fallin’』をリリース。ren-net.com
Photo: Takao Iwasawa Styling: Arisa Text: Miki Ueno