昭和の喫茶店を紹介しつつ、その店をイメージして聴きたくなる80年代の名曲を、80s好きライターの水原空気がレコメンド。Vol.3は駒込駅からの歩いてすぐのかわいい昭和遺跡、駒込「ボンガトウ」。前回訪れたのは大岡山「伊藤珈琲店」。
80年代好きライターの純喫茶巡りVol. 3 駒込「ボンガトウ」にて極上プリン・アラモードを

駒込「ボンガトウ」
いつ見ても何歳になっても心ときめくプリン・アラモード。駒込「ボンガトウ」ではグラスの上に、イチゴ、バナナ、キウイ、サクランボ、ミカン、桃、バニラアイスと生クリームが共演! プリンはケーキ屋さんに併設された喫茶店ならではの手作りで、しかも680円(税別)と嬉しい昭和プライス。まさにプリンアラモードの鏡なのだ。こちらでの正式なメニュー名は「プリン・ローヤル」。翻訳するなら「プリンの王様」といったところ?「ボンガトウ」が誕生した70年代はケーキ屋さんブームで、日本のお茶の間に洋菓子の新しい波が訪れた時代。その後世の中に「パティスリー」もたくさん登場したが、こちらは今でもケーキ屋さんと呼びたくなる希少な存在だ。
鏡と言えば「ボンガトウ」のもう一つの魅力はインテリア。オレンジのランプシェードがUFOのように鏡の中にもいっぱい。腰の高さまであるオレンジと白のタイルが絶妙なアクセントになって、オープンした1977年当時のレトロポップな雰囲気をそのままに伝える。
ケーキはどれもイートインが可能。70年代から変わらないレシピを存分に味わいたい。ショートケーキやレアチーズケーキが一番人気。特にオススメはシロップひたひたのサバラン。洋酒がしっかり効いた大人のスイーツ。
スイーツだけでなく、モーニングも大充実。トーストやホットドッグの他、ホットケーキも。ヨーグルト付きのセットに茹でたまごとサラダをプラスすれば、朝からヘルシー!
喫茶店の楽しみは、小ぶりのナイフ&フォークやミニチュア感溢れるミルクピッチャー、シロップカップにも。縮尺が一瞬わからなくなるこの感じ、どこか子供の頃のままごと遊びを思い出して、ふと幼なじみの顔が浮かんだり。
ランチメニューも充実しているので、一日中いつ訪れても喫茶店らしさを満喫できる。いわば喫茶店版オールデイダイニング。ナポリタンは、自家製ソースで作られた野菜も麺もボリューム満点の一皿。ついまた食べたくなる。
インテリアも隅々まで観察したくなる。ケーキ売り場と喫茶コーナーをつなげる通路はアーチ型。ランプの曲線ともマッチして相似形。
丸窓などケーキ売り場の内装もユニーク。ニッセイのニックンとセイチャンのフィギュアはかなりレア。デザートに少しずつトッピングされたソフトクリームも、この店ならではの味を生み出している。
この店の帰り道に聴きたい80年代の名曲
「夢の中へ」
斉藤由貴
今回の「この店の帰り道に聴きたい80年代の曲」は、斉藤由貴の1989年のシングル「夢の中へ」。井上陽水の1973年のスマッシュヒットを、80年代のデジタルサウンドでリメイク。ポエジーな斉藤由貴のヴォーカルが、時代を超えて古き良きものに命を吹き込み自身最大の売り上げを記録。そう、『夢の中へ』はレトロポップな「ボンガトウ」の魅力にも通じているのだ。
ちなみに夕方からの「ボンガトウ」はネオンカラーのランプがさらに際立って、ポップさ増し増し! まさに夢の中へって感じ。実際の店内ではビートルズがBGM。どれも知ってる曲ばかりで和みます。
水原空気のこぼれ話
Wikipediaによるとプリン・アラモード発祥の地は横浜で、ホテルニューグラントの喫茶室。戦後、米軍将校の夫人たちに、プリンにフルーツやアイスクリームを盛り付けて出したのが始まりだそう。まさに昭和の味。プリン・アラモードの意味は、直訳するなら「おしゃれなプリン」。アラモードにはクリームなどをトッピングした新しいお菓子を指す意味もあるそう。この造形美は発売当時も今もずっとエポックなのだ。
「洋菓子・喫茶 ボンガトウ」
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水原空気
80年代好きライター。夏の扉を開け秘密の花園へ時をかける探偵物語。GINZAウェブ「松田聖子の80年代伝説」でインタビュアーも。