東日本大震災後のCMや、昨年ベストセラーとなった英語絵本など、没後80年以上経てもなお人を惹きつける金子みすゞに呼応して、作家・松本侑子とモデル・小谷実由が紡いだ言葉とは!?
『みすゞと雅輔』“こだま”する金子みすゞ – 作家・松本侑子とモデル・小谷実由が紡いだ言葉とは!?
『みすゞと雅輔』
松本侑子
新潮社 ¥2,000
〈こだまでしょうか〉〈みんなちがって、みんないい〉など、生前500余編もの作品を残した童謡詩人・金子みすゞ。しかし、複雑な姉弟関係、家のための結婚、夫の放蕩、離婚、断筆など、詩作の背景や心の機微に触れられる資料は長く発見されなかった。本作は、実弟・雅輔が残した膨大な日記や回想録を3年かけて読み解き、彼女の生涯や詩への情熱を物語として描いた初の伝記小説。《いつかは終わる限りある命、その一瞬の輝きを、虫や花や汚れた雪の気持ちにまで寄り添って書いている》と雅輔は綴る。一番の理解者だった実弟の目を通して新たに見えてくる、みすゞ26年の人生。血の通った1人の女性表現者が、時代を超えて立ち上がる。
まつもと・ゆうこ≫ 作家、翻訳家。日本初の訳注付き全文訳『赤毛のアン』、評伝小説『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』など、徹底した取材から描く作品が高い評価を集める。
底も果てもないものは、どうしたって届かなくて、どうしたって掴めない。そういうものってどうして魅力的なんだろう。とてもブルーで眩暈がしてしまいそうな、でも到底想像できないどこかに飛んで行っている気持ち。ブルーの意味は、青で、途上で、涙。悲しいようで、心地良いようで、どちらともなくただ寄り添う。幼い頃から考えていた、空が青いのは、海が青いからで、海が青いのは空が青いから。本当の空の色も本当の海の色も見えないまま、私はブルーな気持ちの堂々巡りをこの詩に沈み込める。(小谷実由)