Web3.0が台頭し大きく変わりつつある今、求められているものとは。マルチメディア・アーティストの草野絵美さんに、現在の流行と未来の予測について、話を聞いた。
これからのデジタルまわりはどうなっていく? マルチメディアアーティスト草野絵美さんに聞く

「メタバースやNFTなどが大きなトピックとなった昨年と比べて、今年は緩やかながら、より成熟していくと思います。特に注目しているのは〝AIアート〟。絵心や技術がなくても、ワードセンスがあれば素晴らしい作品が生み出せる時代になりました。まさに〝テイスト・イズ・ニュースキル〟(AIアーティストのパイオニア、クレア・シルバーの言葉)ですね。私自身も『架空のストリートスナップ』というテーマで、ほぼ毎日SNSにアップしているのですが、それがもう楽しくって!たとえば『原宿ファッション』『ロボット』『マリーアントワネット』と、3つの単語を『Midjourney』というサイトに打ち込むと、自動で画像を生成してくれるんです。細かい条件を指定する単語をより詳細に書き、何回もジェネレートを繰り返して、理想のヴィジュアルまでたどり着いたら完成。そこからPhotoshopで手を加えることもあります。ツールによっては学習元のデータがブラックボックス化されているものもあるため、著作権などまだ懸念点もあります」
AIアート
「『Midjourney』のほかに、『Stable Diffusion』がメジャー。日本語入力できる『にじジャーニー』、LINEで気軽にできる『お絵描きばりぐっどくん』などがおすすめ」。写真は草野さんが制作した作品。インスタグラム(@emiksn)で見れる。
人工知能の進化は止まることを知らず。さらに芸術の分野以外にも広がりを見せているという。
「将来は人間の職業がAIに奪われるなど度々話題に上がりますが、私はポジティブに向き合っています。たとえばアイデアの壁打ちとして付き合ってもらったり。よく使うサイトは『ChatGPT』。人工知能がどんな悩みにも答えてくれて、『グリム童話の白雪姫をハリウッド風に』といえば、独自のストーリーを提案してくれる。ほかにも箇条書きからビジネスメールを作成できるなど、とても便利。高精度のSiriのような感じですね」
ChatGPT
「造語を作ったり、文章を書いたりと、幅広いシチュエーションで活用できるチャットサービス。いまとても話題ですよね。とにかく回答が正確で、かなり精度が高い!」。作業の効率化に一役買ってくれるだけでなく、暇なときの雑談相手にもなってくれるそう。
ブームとなったNFTやメタバースは今年どのように発展するのか。
「NFTは、高額取引が話題になった昨年以降から少しずつ落ち着いている印象。魅力的なアート作品が評価される、健全なマーケットになったと思います。そして今後は、もっと一般化されていくはず。ブロックチェーンの利点を活かして、一部ではコンサートのチケットや旅券などでNFTの使い道が各所で研究されています。メタバースは昨年以降、バズワードになるほどの人気ぶりですが、一般化されるにはまだ時間が必要だと個人的には考えています。手軽にスマホだけで遊べるメタバース以外は、VRゴーグルなどの機材をそろえるのが難しいなど、ハードルが高いよう。ですが、そう言っている大半が大人。2010年以降に生まれた“α世代”の子どもたちは、フォートナイトやマインクラフトなど、ゲームの中で自然と仮想空間を楽しんでいる。私の息子もですが、誕生日のプレゼントはゲーム内で使える電子アイテムなんです。そんな考えが広まって、仮想空間が現実世界と肩を並べるようになるのも近い未来ですね」
NFTアーティスト
草野さんが日々チェックしているというアカウントをご紹介。「Hollyさんは自らの声で歌う“声のクローン”を作るアーティスト。作品に登場する女性もご本人です。AIで人形アートを作っているMayaさんの世界観もかわいい!」
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草野絵美
取引総額24時間ランキング世界一を記録したNFTプロジェクト「新星ギャルバース」共同創業者。大学講師などの活動も。著書『親子で知的好奇心を伸ばす ネオ子育て』。