5月12、13日の2日間、東京都庭園美術館で開催された「PRADA MODE」。現代カルチャーに焦点を当てた“巡回型プライベートクラブ”は、2018年のマイアミを皮切りに、香港、ロンドン、パリなど世界中の都市で開催され、東京は9つ目の都市となる。過去にはアーティストのダミアン・ハーストやマルティーヌ・シムズをキュレーターに迎えてきたが、今回は同美術館館長で建築家の妹島和世が監修を務めた。建築と庭園、アート、音楽がひとつになった特別なジャーニーを体験してきました!
PRADA MODE 東京で体験する、混じり合う文化の旅
贅沢な2日間をレポート!
Inside PRADA MODE 東京
DAY 1
12:00
東京都庭園美術館が2日間限定の
プライベートクラブへ変身!

1933年に朝香宮邸として建てられた東京都庭園美術館は、アール・デコ様式の建物と広々とした和洋の庭園で知られる。本館、正門、茶室はそれぞれ国の重要文化財に指定された、建築好きにもおなじみの場所。そんな歴史的建造物と緑豊かな庭園という作りを生かした“サイトスペシフィック”な場が2日間限定で登場した。西洋庭園には西沢立衛設計による木造のパビリオンが出迎え、木陰に置かれたベンチでは、ゲストが思い思いに過ごせるような仕掛けに。基本は完全招待制だが、本館で開催されている展示やエントランス近くのギャラリーなど、一般客も入れる、プライベートとパブリックのハイブリッドな試みも面白い。
エントランス脇のゲートハウスギャラリーでは、旧朝香宮邸や庭園との関係を想起させるアートを展示。ホンマタカシや名和晃平、ナイル・ケティングなど6人の現代作家による作品が並んだ。
13:30
子どもから大人まで参加できる
ワークショップへ
事前予約制のワークショップは、大人向け、子ども向けの2種類開催された。建築家・式地香織がキュレーションした子ども向けのワークショップ「わたしをあらわすすてきなぼうし」には、近所に住む子どもたちが参加。自由な発想で思い思いにカラフルな布を結びつけて帽子を作成。一方、大人向けのワークショップ「ポータブルガーデンをつくろう」には、クリエイターも数名参加。プロの意地(?)とセンスでみなさん夢中で作っていました。
14:00
西沢立衛×石上純也
建築家ふたりが考える
信頼できる文脈のランドスケープ

西洋庭園に向かうと、建築家・西沢立衛がPRADA MODE 東京のために短期間で作成した仮設パビリオンに人だかりが。ここを舞台に2日間を通してさまざまな対談が行われるという。会場に並べられたSANAAのラビットチェアにも聴衆がぎっしり! まず第一弾は、2人の建築家による対談だ。

石上がデザインし、話題となったアート・ビオトープ那須にある「水庭」や山口県にある洞窟のようなレストラン「メゾン・アウル」の制作過程を投影しながら、対談がスタート。人工物とランドスケープの中間を建築で表現できないか?と挑戦したプロジェクトは、何百年も前からそこにあったと思えるものになったと回想。一方、西沢はチリの海岸沿いに建つウィークエンドハウス「House in Los Vilos」や軽井沢のホテル「ししいわハウス」を引き合いに、荒々しい自然の中では建造物を完全にコントロールできないことや、空間だけではなく、時間をデザインすること。それがランドスケープの良さなのではないかと投げかける。
「たとえば、House in Los Vilosは、必要とされる機能は年月と共に変わっていくけれど、そこにずっとある風景(チリの湾)はきっと何十年も変わらない。だからランドスケープに頼って建築していく」(西沢)
都市開発先行や人気のある建築が一般的に求められている現在、信頼できる文脈がなくなってきているのではないかとふたりは危惧する。ただ、その時空間を意識した信頼できる文脈こそ、ランドスケープには求められているのではないかとも。
「信頼できるものにしたい。我々はその一部だと考えている。建築は中と外を分離すると説明しやすいが、人間として考えると一体化するのは当たり前で、分離するのは変。だからこそ、ランドスケープという言葉に期待している」と結んだ西沢の言葉が印象的だった。
16:00
杉本博司×千宗室
趣味と芸術
茶の湯はアートなのか?

杉本博司が「婦人画報」での連載をまとめた書籍『趣味と芸術 謎の割烹 味占郷』(現在では入手困難!)を振り返りながら、覆面の割烹料理店亭主として、幅広いゲストのために器や掛け軸、献立まで考えた「もてなし」を解説。写真家として、現代美術作家として、または古典芸能に精通し、蒐集家でもある氏が「趣味」として表現した一期一会の場は、趣味の域を越え、芸術作品と呼ぶにふさわしい。茶の湯はアートではないのか、といった入り口から、趣味と芸術の線引きについて思考を巡らす1時間。
18:00
カクテルタイムは
ライブパフォーマンスで
一夜限りの贅沢なピクニック
18時からは西洋庭園とリスニングバーでカクテルタイムがスタート。西洋庭園ではトモコ・ソヴァージュ、ジジ・マシン、ハニャ・ラニの生演奏、リスニングバーではフランスの人気DJイヴァン・スマッジのプレイなど、国際色豊かな音楽パフォーマンスを堪能。今回は会場の至るところにスピーカーが置かれ、どの場所でも音楽が流れている仕組みに。2日目はジム・オルーク&石橋英子、ユザーンなど、クラシックからミニマル、アナログまで、クレイグ・リチャーズと野村訓市によってキュレーションされた音楽プログラムは、いま聴きたいアーティストがずらりとラインナップ。
23:00
代官山 UNITへ
アフターパーティ

アフターパーティは代官山UNITへ。ライブやトークショー、ワークショップなど多彩なプログラムを体験した後は、爆音の中、ユースカルチャーの勢いに圧倒され、文化的な1日が終了。
Photo: Miyu Yasuda Text: Mika Koyanagi