それいゆ1954年秋号 表紙 © JUNICHI NAKAHARA/HIMAWARIYA
2023年11月18日(土)より「そごう美術館」にて、『111年目の中原淳一展』が開催される。戦前に刊行されていた雑誌『少女の友』に描いた表紙絵や少女像が絶大な支持を受け、その後『それいゆ』、『ひまわり』、『女の部屋』と、自ら編集する雑誌をスタートさせた中原淳一。いまなおファンは多く、現代のクリエイターたちにも影響を与え続けている中原の生誕111年記念展だ。
多才な中原淳一の仕事の全貌に迫る記念展
戦前戦後に活躍したマルチクリエイターの先駆者の生誕111年を祝う

イラストレーター、服飾研究家、そして雑誌編集者でもあった、マルチクリエイターの先駆者・中原淳一に関するイベントや企画展はとても多い。しかし、中原が描いた膨大なイラストの原画や人形作品が揃う大規模展の開催は、約10年ぶりとのこと。
見応えたっぷりの『111年目の中原淳一展』は、4部構成となっている。
第1章では、画家としての活躍が始まった雑誌『少女の友』にフォーカス。大きな瞳と細長い手足を持った新しい少女像は、現代のアイドルに対するような熱狂的なファンを獲得。後の少女漫画にも影響を与えたと言われる。
第2章では、戦後を生きる大人の女性をターゲットに、中原自らが編集長となって創刊した『それいゆ』を紹介。スタイル画はもちろん、ページレイアウトの斬新さは、現代の私たちの目にも新鮮に映るはず。
続く第3章では、ティーンに夢を与えることを目的に創刊した雑誌『ひまわり』を紹介。2誌の編集長を務めつつ、記事を書き、表紙絵も挿絵も描いた中原のマルチタスクぶりがうかがえる。
そして第4章には、中原がアーティストとしてのデビューのきっかけをつかんだ人形作品が登場。少年時代、人形づくりに熱中した彼は、晩年、再びこの立体制作に没頭するように。流行は時代によって移り変わるものだが、中原の作品がまとうファッションは、不思議なくらい、時を経てもなお「かっこいい!」と思えるスタイル。ぜひ細部までじっくりと見てほしい。

ファッションデザイナー・芦田淳が内弟子として彼のもとで学んだり、髙田賢三がファッションを目指すきっかけとなったのが中原の作品であったり。多くのクリエイターに影響を与える存在だった中原淳一。作品が並ぶ会場で、美的感情に対する刺激を存分に受け取ってもらいたい。
同時に、中原の残した言葉にも注目を。「『いつまでも古くならないもの』−それこそがむしろもっとも『新しい』ものだとはいえないでしょうか。人生はスカートの長さではないのです」など、中原が雑誌に記した優しく、温かい言葉の数々は、慌ただしく暮らす私たちの心に、ハッとする気づきをくれるはずだ。
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中原淳一
なかはら・じゅんいち。1913年香川県生まれ。1930年、上野広小路の高級洋品店のデザイナーに抜擢。1932年、創作人形の個展開催。1935年、『少女の友』の表紙絵を描く(以降1940年まで66回表紙絵を担当)。1939年、ヒマワリ社の前身となる洋飾雑貨と洋裁の店「ヒマワリ」を開店。1946年以降、女性誌『それいゆ』、月刊誌『ひまわり』、『ジュニアそれいゆ』、『女の部屋』、『中原淳一画集』の刊行に携わる。
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111年目の中原淳一展
会期_2023年11月18日(土)〜2024年1月10日(水)
*以降、全国を巡回予定。
会場_そごう美術館
住所_神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店6階
時間_10:00〜20:00
*入館は閉館30分前まで。
*12月31日(日)、1月1日(月祝)は18時閉館。
*そごう横浜店の営業時間に準じ、変更になる場合あり。
休館日_会期中無休
入館料_一般1,400円
Tel_045-465-5515
Text_Ayako Tada