ミヤビ(杉咲花)の記憶障害は、手術がとても難しいものであると判明。三瓶友治(若葉竜也)は手術の練習を始めるものの、どうすることもできず……。『アンメット ある脳外科医の日記』(フジテレビ系月曜夜10時〜)10話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。9話のレビューはこちら。
杉咲花×若葉竜也『アンメット』10話。記憶が消えても残るもの
最終回に向かって、あらゆるシーンがすごみを増している!
考察『アンメット』10話
好きな食べものを
分け合うことの意味
大切な人の好きな食べものを覚えているということ。それは、さりげなくも深い愛だと思う。
第10話に登場したのは、もう手の施しようのない脳腫瘍を患い、死に向かうばかりの患者・柏木(加藤雅也)と、それを支える妻(赤間麻里子)。病院の売店で妻の好きなドーナツを買っておいた柏木が二人で半分こをするような、仲睦まじい夫婦。しかし、病の進行に伴い、柏木の記憶はおぼろげになっていく。
三瓶友治(若葉竜也)は、いつも自分のコーヒーに勝手に抹茶パウダーを振る店員(今泉力哉)がカウンターにいるのを見て、川内ミヤビ(杉咲花)に自分の分も買ってくるよう頼む。しかし、ミヤビは注文の際に三瓶がよく抹茶パウダー入りのコーヒーを飲んでいたことを思い出し、結局トッピングのオーダーをしてしまう。
「三瓶先生見てたら、三瓶先生が抹茶パウダー好きだったこと思い出しました」
そう言うミヤビに、三瓶はラムネを分ける。9話で、ミヤビが子どもの頃よく妹と駄菓子屋で買っていたと話していたラムネだ。
9話ラストで、一過性健忘の症状によって川内ミヤビ(杉咲花)は、三瓶友治(若葉竜也)が誰か突然わからなくなってしまった。その時に交わしたラムネの話を覚えていなかったところからすると、抱きしめあったこともきっと記憶から消えているのだろう。
その後も同僚の小春(中村里帆)を一瞬忘れてしまう描写があった。日に日に記憶が曖昧になっていく柏木を見て、また自分の症状を自覚して、ミヤビはますます、自分の中から次第に何もかもが消えていくことを強く意識しながら生きている。
でも、「好き」は意識ではなく感情だから、きっと記憶が消えていっても残るものなのだろう。だから好きな食べもののことは、きっと覚えている。ふと抹茶パウダーのことを思い出したように。
10話ではミヤビの病状を知り、やるせない思いを分かち合う院長(安井順平)と津幡(吉瀬美智子)も、あんぱんを半分こしていた。亡くなった相手がずっと心の中に居座っていると話した麻酔医の成増(野呂佳代)は、仕事帰りにガトーショコラを一つ買って帰る。きっと心の中の相手と分け合って食べるのだろう。
Edit_Yukiko Arai