街中に突然現れた夏の風物詩、提灯と櫓。町内の盆踊り大会?いえ、違います。ここは香港の中環(セントラル)、警察宿舎をリノベーションした「PMQ(=Police Married Quarters)」というユニークな商業施設。
提灯の正体は5月17日〜29日に開催された、東京と香港の女子クリエイターが集まるアートフェスティバル「SHIBUKARU MATSURI BY PARCO」の演出の一部で、会期初日から、アートやファッション好きの客で賑わっていた。東京からは、元乃木坂46の伊藤万理華、アーティストのとんだ林蘭、ビジュアルアーティストのTakako Noelらが参加。
昨今の香港のアート事情はどうなっているのか。本イベントで香港アーティストのキュレーションを務めたPMQの担当者に尋ねると。
「香港も東京と同じように、ラグジュアリーとストリートアートの熱が二極化しています。そして、時にその垣根を飛び越えるような動きが面白いですね。ルイ・ヴィトンのようなハイブランドが、ストリートでじわじわ人気が出始めている若いアーティストとコラボレーションすることも珍しくないですし、アートバーゼルのような高貴なアートイベントにも、10〜20代の感度の高い子たち足を運んでいるんです。ミュージシャンをしながら絵を描いていたり、写真と映画を両方撮っている人がいたりと、ジャンルをまたいで自分のメッセージを表現するアーティストも増えている気がします」。
奇妙だけど愛くるしいフィギュアの作者は、日本の漫画やアニメが大好きだというSun(右)とPoppy kitty(左)によるクリエイティブユニットDon’t Cry in The Morning(@dontcryinthemorning)。Sunがリスペクトするのは今敏や井上雄彦、kittyは野田凪なのだという(納得!)。
共通の感性を持つ2人で書き上げるというポップな世界観は、香港の若者たちからも大人気!
こちらはジェンダーレスな服作りを得意とする、香港のファッションデザイナーAries Sin(@aries_modement)。「端切れやハンガーなど、日常の中で見逃してしまいそうなものを服のモチーフに取り入れるのが好き!」とイキイキと話してくれた。
彼女が手がける「MODEMENT」は、2018FWシーズンのプレゼンテーションを初めてパリで行った。ランウェイのバックヤードで日本人デザイナーたちとも話す機会があり、とても刺激を受けたのだという。
短く刈り上げられたヘアがカッコいいQuist Tsangは、写真、映画、デザインなど幅広く手がけるパワフルな女性アーティスト。今回の作品を制作している最中に、たまたま日本の暴走族が登場する映画を見て、イメージが明確になったと嬉しそうに話す。日々クリエーションに磨きをかけるアーティストであり、2児の母でもある彼女は、子供たちにも作品の意見を聞くことが多いのだとか。
香港の街のネオンにも溶け込みそうな入り口の看板。
“偉い人”というコンセプトで作品を展示したアーティストのとんだ林蘭(@tondabayashiran)。「世界中のあらゆる場所で、銅像が立つくらい偉い人」という価値観を彼女なりの解釈で立体的に表現。パンストに挟まるロブスター。安定のとんだ林ワールドが広がっていたのでした。
『GINZA』でもおなじみのビジュアルアーティストTakako Noel(@takako_noel)の作品は彼女の写真とペイントを大きな布にプリントしたもので、風が吹くたびに心地よくひらひらと揺れていた。香港滞在中も、たくさんシャッターを切る瞬間があったそう。
チョーヒカル(@hikaru_cho)が描いたのは“国境やあらゆる壁を越える”というテーマで、女の子がギョロリとこちらを覗いている作品。ゲリラ的にスタートしたライブペインティングで会場の注目の的となった。中国で以前オーダーメイドしたという、ブルーのチャイナドレス姿が麗しい。
昨年秋に乃木坂46を卒業した“まりっか”こと伊藤万理華は、日頃からイラストを描いたり写真を撮ったりと、クリエイターとしての才能を発揮している。香港ロケを行った自身の写真集『エトランゼ』のアザーカットにペイントを施した作品を展示して、香港に堂々カムバック!言わずもがな、香港でもまりっかファンたちが会場に殺到していました。
以上、香港と東京の女子クリエイターたちが集結した、エネルギッシュな一夜の様子をお届けしました。中環のエリアには「Gagosian」や「芸術門」など有名なギャラリーが多数。少し足を伸ばせば、香港島の南部や東部にも小さくて面白いアートスポットがいくつか建ち始めているそう。香港のアートに少しでも興味を持ったなら、飲茶とアート散策を目的に、週末トリップに出かけてみては。