ボトルの底に赤ワインが少し残っている。飲まなきゃもったいないと思うのに、タイミングを逃してしまって、ついついそのまま──こんな場面は、誰にでもあるのではないかしら。
手を伸ばしにくくなるのは、風味が微妙に変化しているから。でも、それを逆手に取る方法もあるんです。ものは考えよう。飲み残しの赤ワインを幸せな味に変身させる三つの方法を紹介します。
残った赤ワインにむしろ感謝したくなるのが、手製のヴィンコット。イタリア語で「煮たワイン」の意味で、本来は、搾ったぶどう果汁を煮詰めたエキスを木樽で寝かせてつくる。そのショートカット版・お手軽バージョンをつくっちゃえ、というわけです。
【ヴィンコット】
赤ワイン約1カップなら、はちみつ大さじ2以上を目安にする。ホーローの小鍋に赤ワインとはちみつを入れ、弱火で半量くらいに煮詰める。後半に好みのジャムを大さじ1くらい加えるのは、私のやり方。“なんちゃって”スタイルだけれど、風味が増し、さらにとろみがつく。
赤ワインでなければ生まれない美味。高貴な甘酸っぱさがとろけて広がると、思わず目を閉じてしまう。アイスクリームやヨーグルトはもちろん、チキンや豚肉のソテーに添えたり、チーズにかけてデザート……ああ贅沢。
二つめ。ほんのり赤ワインの色と風味に染まった塩をつくります。濃いワイン色に染まるので、サラダにぱらぱら、ゆで卵に散らしても美しい。
【赤ワイン塩】
小鍋に塩大さじ1、ワイン約1/4カップを入れ、弱火にかける。木べらで混ぜ、塩に赤ワインを含ませるようにしながら水分を飛ばし、ゆっくり煎りつける。出来上がったらキッチンペーパーなどの上に広げて数時間置き、水分を蒸発させる。さらさらになったら容器に保存する。
三つめ。冬は、やっぱりこれ。マグカップにたっぷり注いだ熱いのを掌で包んで飲んでいるうち、身体じゅうがぽかぽか温まってきます。
【ヴァン・ショー】
小鍋に赤ワイン、砂糖、スパイス(シナモン、カルダモン、クローブなど)、柑橘類(レモンやオレンジなど)の輪切りを2枚ほど入れ、ゆっくり温める。
ヴァン・ショー、つまりホットワイン。もしお酒が飲めなくても、この飲み方なら大丈夫というひとも多いと思う。赤ワインを水で好みの薄さに割り、レモンやオレンジの量を増やすと、ぐんと飲みやすくなる。私のフランス人の友だちは、テーブルワインは炭酸や水で割って飲むことも多いのよ、と言っていた。熱いワインも、ヨーロッパのワイン文化に根づいた飲みもののひとつです。
冷え込む夜のおともに、赤ワイン。温かい靴下を履いて、お気に入りの肩掛けで身を包んでぬくぬくとしたら、赤ワインの時間の始まり。わざわざ余らせる楽しみができたら、それはそれでラッキー!