タラという名前の魚を知っていますか。
マダラ、スケトウダラ、ギンダラ……いろんな種類があるけれど、いずれも淡白な白身、黒灰色の丈夫な皮、鱈とも大口魚とも書く大きな魚。日本では、青森がマダラの一大産地として有名だ。タラはこれから冬に向かって旬を迎えるのだが、スーパーなどでは切り身の冷凍ものが売られていることも多く、値段が安定していて安いのもうれしい。
じつはこの魚、世界中あちこちで愛されている人気者なんです。
青森の郷土料理〝じゃっぱ汁〟の主役だし、青森に生まれ育った友だちが教えてくれた〝タラたま〟は禁断の味。乾燥タラの身をトンカチで叩いて細かくほぐし、卵黄と混ぜると、いくらでも酒が進む!のだそう。たらこは、その名前が示す通り、タラの卵巣。朝鮮半島では、魚介のチゲをつくるときはタラが欠かせないし、内臓を塩漬けにする辛い塩辛〝チャンジャ〟もおなじみ。カチカチに乾かした干しダラを水で戻して煮るスープ〝プゴクッ〟は、二日酔いの朝の特効薬。まだまだあります。イギリスのファストフード〝フィッシュ・アンド・チップス〟には、揚げたタラやヒラメがマスト。ポルトガルで〝バカリャウ〟と呼ぶタラの塩蔵品を使うコロッケやグラタン、じゃがいも炒めは、庶民の食卓と切っても切れない存在だ。
ね、ソテーや塩焼きにするのだけではもったいないでしょう? そこで、ぜひ勧めたいのがタラのブランダード。南仏でよく食べられているのは、マルセイユ港で干しダラを多く扱った歴史があるから。クセになる味で、一度食べたら、またつくりたくなる。干しダラを使うバージョンもあるけれど、手軽につくれる生の切り身も遜色のないおいしさ。ブランダード(=混ぜる)の名前の通り、なめらかなペーストです。
二十分もあれば、簡単にできますよ。
【材料】
タラ大2切れ(約200g)
じゃがいも2個
牛乳1/3カップ
おろしにんにく1片分
オリーブオイル大さじ2
ローズマリー長さ10㎝分
塩・こしょう適宜
【つくり方】
①小鍋に湯を沸かし、皮をむいて乱切りにしたじゃがいもをゆでる。柔らかくなったら湯を捨て、フォークなどで細かく潰しておく。
②タラの皮と骨を取り除く。
③小鍋にタラ、牛乳、ローズマリーを入れて火にかけ、潰しながら煮る。
④ローズマリーを取り除き、①のじゃがいも、おろしにんにく、オリーブオイルを加え、全体をよく混ぜながら火を通す。適度に水分が飛んでふんわりしたら火を止め、塩・こしょうする。
カリッと焼いたバゲットにたっぷりのせて、どうぞ。タラの匂いを和らげてまろやかな風味に仕上げるために必ず牛乳で煮るのですが、じつはローズマリーが最高の風味づけ!