太ることに対しても、痩せることに対しても
わたしは役者として何事も恐れていません
役づくりのために体重を増やす、弱冠19歳の女優、富田望生が話題だ。それは4年前に公開された映画『ソロモンの偽証』での出来事。原作は宮部みゆきの3部からなる長編小説で、映画も前編・後編にわたる超大作だ。登場する33名の中学生は、日本映画史上最大規模のオーディションで選ばれた。
「女の子は主人公の藤野涼子という役を狙って、男の子はその周りにいる主要メンバーを狙う人がほとんどのオーディションでしたが、わたしは浅井松子役としてオーディションに呼ばれました。大きい映画のオーディションなんて初めてだったから、しっかりかっちりやらなくちゃって緊張していたのですが、すごく自然にいろんなことを話せたんです。そのうち『あ、この人たちと(お仕事が)できる気がする、大丈夫だ!』って思えてきて……」
事務所に所属して3年目。数々のエキストラを経て、映画の大役をつかみとった。富田さんが演じた役は、塚地武雅さん演じる父と、池谷のぶえさん演じる母に大切に育てられた米屋の一人娘で物語のキーパーソン。しかし富田さんは考えた。演じる松子はもうちょっと太っているのではないかと。当時は中学3年生。おしゃれや異性に興味を持ち、みんなが自分をどう思うかが気になるお年頃にもかかわらず、2カ月半で体重を約15kg増やして撮影に挑んだ。
「松子ちゃんの候補になれるくらい、もともとぷっくりさんではあったんです。体重を増やすために特別な何かをやったわけではなく、母が作ってくれたおいしいごはんをいつもよりたくさんもりもり食べて、よく寝て、よく笑っていました。池谷のぶえさんも『一緒においしいものをいっぱい食べて、一緒にぷくぷくしようねえ』と言ってくださって。たぶん松子ちゃんもお母さんからこういう風に言われて育ったんだろうなと思うと、太ることに対してまったく苦はありませんでした。『おいしいものを食べている時が一番幸せ』という台詞があるのですが、松子ちゃんのキャラクターが魅力的だったので、そんな子になれるなら……という思いでした。食べることがすごく幸せに感じて、それでどんどん太っていった感じですね」
最近では『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)や、連続テレビ小説『なつぞら』(NHK)などの出演が記憶に新しいが、いずれの役もぷくぷくキャラだ。しかも役に応じて体重管理もしていると言う。
「作品と作品の合間に空きがあると痩せることはあります。『3年A組』の撮影が終わったあとは10kgくらい体重が落ちてしまいました。演じる役の子が食べたいと思うならわたしも食べたいのですが、映画『チア☆ダン』の時は苦労したんです。ダンスシーンも多く常に動いていたのでカロリーを消費して痩せちゃうんです。役によってどういうお家の子なんだろう、何を食べているんだろうって考えるのですが、その時演じた役の女の子は、母親から愛情を受けず、家にスナック菓子が散乱しているような家庭だったので、とにかくカロリーがとれる甘いものやお餅を積極的にとっていました」