高級クラブから喫茶店まで、遊び場はたくさんある。男たちにとっての銀座とは、どのような街であるのか。銀座を知り、街を愛する5名に語ってもらった。
銀座を知り、街を愛する。スタア・バー・ギンザ の岸 久さんが語る 「銀座のバーならではの 良さを残していきたい」

岸 久
スタア・バー・ギンザ
銀座のバーならではの
良さを残していきたい
僕らが20代の頃は、バーテンダーって今のようにメジャーな職業ではありませんでした。だから、僕のようにアルバイトで手伝ったら面白くなってずるずるという人も多かったと思います。働き始めた頃は、基本を守ればいいと言われたけれど、今のように情報も多くなくて、何が基本なのかもよく分からなくて、バーテンダースクールに通って。そこで銀座が僕に合うと言われて、勤め始めたんです。洋モノのバーの世界のなかでも銀座は、紹介制というものが浸透している和風の街だったからだと思います。
自分の店を構えてから今年で17年目になりますが、銀座のバーに立つようになった30年ほど前のバブル時代は、銀座にバーを持つとは思ってもみませんでした。当時のこの辺りの物件は借りるのではなく買うような価格でしたし。銀座にバーが急激に増えたのは10年ほど前ですね。それこそ昭和の終わりには40軒なかったくらいで。今は少し減少傾向にありますが、それでも350軒はあるんじゃないかな。
お客様も変わりました。昔は紹介や何かで連れてきてもらって、気に入ったら通って、自分の店にしていくというのがバーの楽しみだったのに、今は情報を見て店に来る人も増えましたね。それでも昔のように自分なりの価値観を持って来てくださっているお客様もいるので、そういう方々のために雰囲気を守っていかなければと思っています。銀座の店は特に、店と他のお客様と自分という構図が理解できないと面白くない。席がないなら立たせて飲ませてくれと言われても違うんです。僕としてはそこを流さないでやっているつもりです。銀座のバーの良さは、奇をてらわずに、普遍的なものがじっくり残っているところ。クラシックでオーセンティックな部分を守っていくことも、僕ら銀座のバーテンダーの義務だと思っています。
Hisashi Kishi
1965年生まれ。1996年第21回世界カクテル・コンペティションで日本人初の世界チャンピオンに。日本バーテンダー協会会長、日本バーテンダー&ミクソロジスト学院の校長も務める。
スタア・バー・ギンザ
並木通りの地下にひっそりと佇む。カクテルは無論、おしぼりや氷、おつまみなど、バーに存在するものすべてが主役である。
中央区銀座1-5-13 三弘社ビルB1
☎03-3535-8005
🈺17:00〜24:00
㉁無休