Tempalayのメンバーとして活動するほか、様々なアーティストに楽曲提供をするなど、多彩な才能を発揮しているシンガーソングライター、トラックメイカー、AAAMYYYさん。2021年8月18日に自身のセカンドフルアルバム『Annihilation』をリリースします。そんな彼女の魅力に迫るべく、ニューアルバムのことや、音楽に関心を持つようになった少女時代や留学時代のこと、そして猫を愛する素顔までたっぷりインタビュー。3回に分けて詳しくお届けします。
AAAMYYYさんニューアルバム『Annihilation』についてインタビュー。Vol.1 アナイアレイションってどんな意味?
――ではまず、ニューアルバム『Annihilation』のお話から。“アナイアレイション”と読むそうですが、タイトルの意味を教えてください。
日本語でいうと「対消滅」。物質と反物質、対になる2つのものが衝突し爆発して消滅してしまう、という意味があるんです。内なる自分と外の自分が衝突するような内容の作品でもあるなと思ったので、このタイトルにしました。
――もともと知っていた言葉なんですか?
ナタリー・ポートマン主演の『アナイアレイション 全滅領域』という映画があるんです。宇宙から隕石が落ちてきてそのエリアだけ「シマー」という現象が起きるという。光の屈折がおかしくなって、その中にいる生態系が変化してしまうんですが、それがSFチックで美しくて好きだったというのがあって。そこから拝借しました。
――それはやっぱり2020年以降のコロナ禍が影響しているんでしょうか? コロナという隕石が落ちてきて、自分の中に「シマー」的な現象が起きた、みたいな。
コロナ以前は、こういう見られ方をするのがいい、とか、こういう姿勢でいろんな挑戦をするのが良し、みたいなことが自分の中はあったんです。でも、それは違うかもしれないなって。当たり前だと思っていた概念が必ずしもそうではないのかも、と。つまり、自分の価値観をつくりあげていた外的要因、社会的目線とか体裁とか価値観とか、そういったものが意外と自分を苦しめていたんじゃないかなって。だから、自分と同じ価値観を誰かに求めるのはやめよう、誰かの考えを自分の価値観ベースで白黒判断つけるのはやめようと。
――詞にもそれは表れていますよね。例えば、「不思議」という曲はまさにそう。
「多様性」という言葉が浸透してきて、良い意味でも悪い意味でも多用されるようになって。何が本当かそうじゃないのかすらも判断が難しくなってきてるんじゃないかなって。
――何を信じればいいのか。難しいですよね、いまは。
美しく聞こえる言葉も、よくよく近づいてみると表面的なことしか言ってなかったり。かと思えば、本質的にしっかり考えられているものも同時に存在している。なんだか難しい世の中だなあって。
――SNSなどはよく見たりするんですか?
自分自身もやっているんですが、結局、自分が求めている情報しか得られないところだなって。それが世界のすべてだと思いがちじゃないですか。そこは気をつけないといけないなって。
――AAAMYYYさんは以前、ミュージシャンが政治の話をするなという意見に疑問があると、インタビューでおっしゃってて。
その頃は、SNSを通じて「私はこう思う」という意見を発信することを良しとする、そういう信念のもとにやっていたんです。でも最近は、それは違うなと。ノンポリになったとか、言わぬが花と思うようになったわけではなく、前後関係や歴史的背景がある事柄に対して140字でものを言えないなと思ったんです。
――より慎重になった。
そう。自分の思いや意見を発信するのであれば、音楽やリリックの中に落とし込むことがいちばん伝わるなって。そういうスタンスになりました。
――今回のアルバムは全10曲ですが。製作はいつ頃から始めたんですか?
2019年の夏頃には着手していました。その年の内に録音したのも3曲ほどありましたし。2020年にはアルバムを出したいという気持ちでいたので。でも、世の中がこういう状況になって。
――じゃあ、最初に考えていた方向性と違う感じに?
そうかもしれません。より内向的になったというか。前回のアルバム(『BODY』2019年2月発売)がSFチックなコンセプチュアルなアルバムだったので、最初はそういう作り方をしていたんです。コロナがなければもっとSFな感じになっていたかもしれないですね。
――SF好きなんですね。今回の“アナイアレイション”しかり。
好きです。映画でいえば『インターステラー』とか『2001年宇宙の旅』とか『フィフス・エレメント』とか。近未来ものとかディストピア系がすごく好きなんです。人間が失敗して自然環境が破壊されてしまって、という設定に現実味があるし、その中で人間が何をどう考え、どう行動し、どんな未来になるのか、それは監督の空想ではあるんですが(笑)、それが面白いなって。
――ところで、AAAMYYYさんは「スマホで曲を作る」そうですが、それはつまり、どうやって作ってるんでしょうか?
「Figure」という音楽制作アプリを使うんです。デモ段階のメモ書きという感じでいつも使いますが、わりと音が良かったりするので、今回は曲の中にも入れています。「Utopia」とか「PARADOX」という曲に入ってるシンセの音はそう。「Leeloo」もそうですね。結構使いました、今回は。
――具体的にはどういう手順なんでしょう?
こういうビートかな、こういうベースラインがいいなと思うと、Figureにメモするんです。リードとなるシンセの音階とか。あと、メロディもボイスメモで録っておいたり。シンセサイザーの音づくりから曲を作っていくので、家にあるアナログシンセとかソフトシンセとか、どちらも併用して作ります。
――そもそも音楽自体はいつ頃からやるようになったんでしょう? 小さい頃にピアノを習っていたそうですね。
ちゃんとした興味を持つようになったのは高校時代から。軽音学部だったんです。小さい頃に習っていたピアノは、習い事。いまだに楽譜も読めなくて、実は。音だけで覚えて弾く、という習い方だったので。
――軽音に入ったということは音楽はよく聴いていたんですね。
というより、ドラムを叩いてみたい、ベースを弾いてみたい、いろんな楽器を触ってみたいという興味から始まってるんです。
――ロックが好きだからではなく、楽器への興味?
そうです。楽器の仕組みを知りたかった。だから、いろんな楽器をやって遊んでたました。将来は音楽で食べていこうとか、そんなことはちっとも思わず。
――軽音では誰かのコピーはしてましたか?
東京事変とかやってました。ちょっとだけオリジナル曲を作ったりもしたかな。ただ、音楽をちゃんとやるようになったのは大学生の頃。カナダへ留学したことがキッカケになってるんです。
――独特で面白い経歴だなと思ったのは、AAAMYYYさんは「キャビンアテンダントになりたくて」カナダへ留学されたと(笑)。
なりたかったんです、エア・カナダのCAに(笑)。ただ、カナダのバンクーバーにいたんですが、クリエイティビティを高める環境があって。……話がちょっと長くなるんですがいいですか?
――では、そのお話は次回詳しく聞かせてください。
INFOMATION
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AAAMYYY
シンガーソングライター/トラックメイカー。2017年からAAAMYYY名義でソロとして活動スタート。2018年よりTempalayに正式加入。様々なアーティストとのコラボレーションや、楽曲提供、CM歌唱提供などを行うほか、モデル活動も。幅広い活動は注目を集め、2019年にファーストフルアルバム『BODY』をリリース。2021年8月18日に待望のセカンドフルアルバム『Annihilation』を発表。8月20日には「FUJI ROCK FESTIVAL’21」、8月28日には「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2021」にいずれもTempalay として参加。