神出鬼没のアーティスト、A VIRGIN。ライヴハウスでギターをプレイする日もあれば、クラブではDJセットでフロアを踊らせるときもある。2023年4月にクロエがクリエイティブ・ディレクター、ガブリエラ・ハーストの来日記念イベントを行った際も、エッジの効いた演奏で会場を沸かせた。さらにスナップにモデルとして登場することも。さまざまな場で目にする機会が増えてきた彼女は、自分の活動について次のように語った。
「確かに、私が出没する場所ってめちゃくちゃ地下かめちゃくちゃ華やかなところか両極端かもしれない(笑)。いいのか悪いのか、はっきりと〝ここだ〟っていう活動シーンがないですね。でも、みんながわかりやすい方向に流れていくことに対して〝つまらないな〟って思うところがあるし、だから今の曖昧さが自分にとってはいいのかも」
仙台出身で、19歳の時に上京した。実は、知る人ぞ知るバンドTADZIOの元メンバーである。
「19歳の時に、ノイズミュージシャンの中原昌也さんやレイ・ハラカミさん、ピアニストの渡邊琢磨さん、高円寺のレコードショップLOS APSON?のオーナーさんとか、そのあたりの濃い大人たちと知り合って。中原さんに誘われてライヴに行ったらライトニング・ボルトとあふりらんぽのツーマンで、衝撃を受けました。どちらも2ピースじゃないですか。私も誰かと2人組でバンド組もうと思ったんです。中原さんに、渋谷の焼き鳥屋さんで〝お前も誰かとバンド組めよ〟ってすごい詰められたのもあって(笑)。友達のドラマーと2人でTADZIOを結成しました」
海外ツアーも行い、コアなリスナーに支持されるバンドとなったが、惜しまれつつも解散。その後、2019年からソロ活動を開始した。
「相方が機材に変わったみたいな感じです(笑)。以前からやっていたノイジーなギターが鳴るロックに、サンプラーを使った電子音がのるようになったことでちょっとサイバーな音楽性になったと思います。打ち込みのエレクトロニックな音って、いろんな音色を出してみるだけでもすごく楽しいんです。コロナ以降ライヴもクラブですることが多くなり、DJセットがメインでしたが、最近ライヴハウスで、大音量で楽器を演奏するとやっぱりよいです」
長年にわたり世界中のライヴハウスでギターを掻き鳴らしてきただけあって、説得力のあるコメント。ちなみに、ソロになった後、サウンド面だけではなく見た目にも変化があらわれた。
「バンドの時は2人で統一感のあるファッションを意識していましたが、今は自由に選んでいます。今日身につけているのもそうですけど、最近ハマってるのは子ども服。デザインが可愛くて。サイズは150くらいがぴったり。ステージではレオタードで出ることが多いですね。袖がないと、こんなに動きやすくてライヴがやりやすいのかと気づいた。子ども服もレオタードも、ストレスがなく機能的で可愛い。ギターはフライングVを使っているのですが、前に〝レオタードのVラインと合わせてるの?〟って言われたことがあって。そんな深い意味はないです(笑)。脚を出すスタイルも好き。私の場合、太ももにタトゥーがあることで、露出が多くてもいやらしくは見えないのも、ミニボトムを好む理由です」
印象的なタトゥーについては、こんなエピソードもある。
「ツアーでオランダに行った時、アンネ・フランクが住んでいた家を訪れました。ナチスから逃れるために彼女が隠れていた部屋が公開されている博物館で感銘を受けました。帰国してすぐ自分でアンネを描いて、二の腕にタトゥーとして入れてもらったんです」
家では音楽だけをかけることはあまりなく、映画を流しながら劇中の音を聴くシチュエーションがほとんど。作品のインスピレーションも、映像から受けることが多いのだとか。
「最近は配信チャンネルで観た『ガンニバル』が最高でした。柳楽優弥が、織田裕二と柳葉敏郎を混ぜてサイコをプラスしたような、凄絶な演技で。『THE IDOL/ジ・アイドル』も、出演している子たちが可愛かった。今楽しみにしてるのは、ウルリケ・オッティンガー監督の『アル中女の肖像』。1979年の作品で、日本では今まで公開されてなかった貴重なものです。あと、去年一番好きだった『X エックス』というホラーがあって、今はその前日譚『Pearl パール』も気になっています。これからは音楽を通して映画に関わっていくような仕事もしたい。楽曲の表現する手段においても、映像は重要な位置を占めています」