ディズニープラスで好評独占配信中の新作ドラマ『七夕の国』。『寄生獣』の岩明均が1990年代に連載した同名漫画を、舞台を現代に移して実写化。ある日、建物や人が“球体”にまるくエグられる怪事件が発生。役に立たない“超能力”をもつ大学生ナン丸は、真相解明に巻き込まれ、ある閉鎖的な町を訪れたのをきっかけに、自分がこの地にルーツのある、球体を操る能力者だったことを知る──。本作で共演した3人に、作品のもつ普遍的なメッセージ性について考察し合ってもらった。
ドラマ『七夕の国』細田佳央太×藤野涼子×上杉柊平にインタビュー
物語が社会に問いかける「考えることをやめるのって罪じゃないですか」
──この作品は超常ミステリーでありながら、若者が将来に抱く不安や、日本人のムラ意識、環境問題など、いろいろなテーマを含んでいます。特に心に響いた点はありますか?
細田 僕が演じた主人公のナン丸って、原作もそうですが未来に関して楽観的なんです。それって、原作がスタートした1996年ごろはまだSNSが普及していなかったからだと思うんですよね。今は、SNSによって情報が身近にあるので、何が正しくて何が間違っているのかがとても判断しづらい。だから今回、舞台を現代に移し、超能力が日常に侵入してきた時に、人々が惑わされるみたいな状況は容易に想像がつきました。ナン丸を演じる上でも、ただ前向きなだけのキャラクターではなく、超能力に対する漠然とした不安や恐怖みたいな部分はきっとあるだろうなと思いましたね。
藤野 もしこのドラマに出てくる丸神の里のように排他的な環境で育った人がいたとしても、現代はスマホがあるから情報は入ってくると思うんです。もちろん今でも日本人特有の気質として、よく言えば協調性、悪く言えば〝出る杭は打たれる“みたいな感じで、みんなが同じでいるようにと求められる機会はあると思います。でも、それもいい意味でも悪い意味でも、だんだん減ってきてはいるのかなと思っていて。なんとなくこの作品ともつながっている気がしました。
上杉 僕、ナン丸が丸神の里の住民たちの前で言うセリフですごく共感した部分があって。じゃあ、ここで細田さんにクイズです。「自分たちを守ろうとするあまり、かたくなに耳をふさぎ、考えるのをやめるのって」、この続きはなんでしょう?
細田 ええいきなりですか!? えーっと……、あ! 「罪じゃないですか」。
上杉 そう! 「考えることをやめるのって罪じゃないですか」というセリフに、僕は「そうだよな」と納得して。現代社会にも当てはまるところがありますよね。劇中には“球体”を操る超能力が登場しますが、このスマホだってある意味では球体と同じで、使い方次第なんです。人を傷つけることもできれば、幸せにすることもできる。ただ業務的に使う人もいれば、自分から与える側に回って活用する人もいる。つまり球体はメタファーで、考えるのをやめた人から消費される側に回っていく。それはおそらく時代が変わり、球体が比喩するアイテムが別の何かになったとしても、永久的に続くと思うんです。知っているかどうかで、生き方が違ってくる。そういう真理が描かれているのが面白いなと。
[衣裳クレジット_細田佳央太] ジャケット¥303,600、シャツ¥124,300、パンツ¥166,100(すべてマルニ|マルニ ジャパン クライアントサービス tel_0120-374-708)
Photo_Wataru Kitao Styling_Satoshi Yoshimoto(Hosoda), Saori Katayama(Fujino), RIKU OSHIMA(Uesugi) Hair & Make-up_NOBU(HAPP’S / Hosoda), Koichi Takahashi(Fujino), Kazuma Kimura(skavgt / Uesugi) Text&Edit_Milli Kawaguchi