創作のアイデア、生きるヒント、背中を押してくれたフレーズなど。クリストフ・ブルンケルの“今”につながる大切な存在とは?
クリエイティブ・ディレクター、クリストフ・ブルンケルに聞く、あなたのミューズは誰ですか?
muse
パブロ・ピカソ
自分にないものを持つ人が
与えてくれるエネルギー
雑誌『Purple』の創立メンバーで、『Le Figaro』誌でクリエイティブ・ディレクターも務めたクリストフさん。自身で彫刻やコラージュを制作するアーティストでもある彼が、ミューズについて持論を語ってくれた。
「私が思う本当のミューズとは、愛する人のこと。創作には情熱とエネルギーが必要で、大切な誰かの存在がそれを与えてくれる。たとえるならば、ロダンにとってのカミーユ・クローデル。アートとは結局、愛情関係でしかない。そして愛はコントラストを好む。恋愛でなくても、相違点に惹かれそこに学ぶことが肝要。私も多くのカメラマンと仕事をしてきましたが、自分と似ている人と組んだことはありません」
言い換えれば、補完し合える相手との出会いが創造性を導くとのこと。未完成性からインスピレーションが湧くのだ。
「不足を補うかのように芸術家は作品を作ります。ピカソだって、もし完璧な人生を送っていたら、あんなに絵を描く必要があったのでしょうか?」
ピカソは、クリストフさんのアーティスト人生の重要な出発点のひとつだ。
「クリエイティブな原動力という意味でのミューズなら、やはり彼です。幼い頃に初めて見て以来、作品が運ぶ喜びに心躍らされています。描き手が楽しんでいたのが伝わってくるんです。そしてピカソは構築と破壊を繰り返し、常に何かを発明しようとした画家でした。ひとつのことを成し遂げた後はもう振り返らない。私にとって非常に特別な存在なので、鑑賞する前にはいつも十字を切っています。あと、彼は作品に敬意を払うためにアトリエではきちんとおしゃれをしていました。それにならって、私もいつもワイシャツに革靴姿なんですよ」
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クリストフ・ブルンケル
>> フランス出身。雑誌『Purple』、全国紙『Le Figaro』ラグジュアリー&モード版にてクリエイティブ・ディレクターをそれぞれ15年間務めた。自身ではペインティングから家具まで制作活動を展開。
Photo_Wataru Kitao, Getty Images Text_Motoko Kuroki