創作のアイデア、生きるヒント、背中を押してくれたフレーズなど。Tairaの“今”につながる大切な存在とは?
モデルTairaに聞く、あなたのミューズは誰ですか?

muse
シモーヌ・ド・ボーヴォワール

自分とは何かを模索する中
光を与えてくれた言葉
過去のインタビューを振り返っても、自身のアイデンティティやジェンダーの在り方について語る言葉が見つからずモヤモヤと悩むことが多かったというTairaさん。今回、ミューズとしてフランスの哲学者シモーヌ・ド・ボーヴォワールを挙げてくれたが、その答えにたどり着くまでも何度も自問自答を繰り返したと教えてくれた。
「インスピレーションの源になるような“ミューズ”の概念は理解できますが、それを自分事として考えたときに自己を重ねて共感を持てるような人物は歴史の上にも、物語の中にもいないのかもしれない、と気づいたんです。性別に限らず、日本のコンサバティブな社会で育つ中でこの人のようになりたい、なれるかもしれないと可能性や道標をくれる対象が見つからなかった。もちろん人生で影響を受けたものはたくさんあります。でもミューズと言えるほど絶対的な存在は私にはなく、目指すことは、自分が自分であることとしか言えないのかもしれない、と思い至りました」
シモーヌ・ド・ボーヴォワールはそんな考えを肯定してくれる存在だったという。
「女性解放運動やフェミニズムの活動を広めた彼女は、私にアイデンティティと向き合うための光を与えてくれました。シモーヌの有名なフレーズに『人は女に生まれるのではない、女になるのだ』があります。男らしく、女らしくいることに疑問を持ち、大学のジェンダー学を通してこの言葉と出会い大きな衝撃を受けました。シモーヌはその後に続くジュディス・バトラーをはじめ多くのフェミニストたちが進んだセオリーの礎を70年以上も前に生み出した。彼女たちが切り拓いたその道の上を、今も私たちは進んでいると感じています」
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Taira
タイラ>> 北海道生まれ。国際基督教大学を卒業後、イギリスの大学院でカルチュラル・スタディーズを学ぶ。同時期にスカウトされ、モデル活動を開始。〈プラダ〉のショーやキャンペーンに登場。
Photo_Jack Orton, Aflo Text_Kana Umehara