生物学にも精通し、生命力あふれる陶芸作品を生み出している作家、ゾーイ・パウエル。日本では初となる彼女の単独展「イシリアル」が、「I’M OK 代官山」、「I’M OK 千駄ヶ谷」、「I’M OK 二子玉川」の3か所にて、2022年10月8日(土)から順次開催される。作家自らが採取した粘土や鉱物をもとに作られた器は、あたたかさや力強さなどを感じさせる。
陶芸作家ゾーイ・パウエルが日本初の単独展を開催。思わず触れたくなる器がずらり

あたたかで、優しさを感じさせる、丸みを帯びた形状。もしも触れるなら、両手で、柔らかく包み込むようにして持ちたくなる。これが作家ゾーイ・パウエルの器を目にしたときの感想だ。
作品のインスピレーション源となっているのは、子宮や繭、種子のサヤだという。見た者に、力強く、有機的な印象を与えるのは、脆弱な生命を保護する役割を担うものたちにインスパイアされたデザインだからなのだろう。
「わたしの作品のテーマは、強さ、不確かさ、そして聖域のバランスを見つけること。感情の変化が時間の経過とともに身体にどのような影響を与えるのか、器の中の空間がどのような安らぎを与えるのか。作品を通じて、それを記録し続けていきたい」とゾーイは話す。
手になじむ心地よい質感と美しい光沢は、ゾーイのこだわりの素材と制作工程から生まれる。自分の目で見て、自らの手で採取した粘土や鉱物を加工し、釉薬を使用せずに焼成。そして、一点一点を手作業で磨き上げることで、土本来の光沢を出すことができるのだそう。このようにして器に生き生きとした生命力と、洗練された美しさを与えている。
1点ずつすべて手作業で制作するため、同じ形状のものは2つとない。
ちなみにゾーイが素材を採取するのは、地元であるミネソタ州セントポール。身近にあるものが器の素材になりうることを、素材採取から作品制作まで行うワークショップの開催を通して伝えている。
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手びねりによる器づくりのオンライン・ワークショップへは、日本からの参加も可能。アーティストに直接話を聞ける貴重な機会なので、10月8日(土)からの「イシリアル」でゾーイの世界観にハマった人は、ぜひ参加してみてほしい。
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Zoe Powell
1994年、イリノイ州シカゴ生まれのフランス系アメリカ人。ウィリアム&メアリー大学を2016年に卒業、美術と生物の博士号を取得。現在はミネソタ州セントポールにパートナーとともに設立したギャラリー兼ネイティブクレイプロダクションスタジオ「Studio Alluvium」を拠点に活動中。自ら収集した粘土や鉱物を加工し、土本来の光沢を出すために釉薬は使用せず、一点一点手作業で磨き上げた、有機的で彫刻のような器を創作。地元で採取した素材を使うことはサスティナビリティの実践であるという考えのもと、素材に敬意を払い、責任を持つ制作プロセスを目指す。作品は『Dwell』、『American Craft』、『Ceramics Monthly』などに掲載され、個展に加え、アメリカ、ヨーロッパのさまざまなギャラリー、学術機関(*1)、美術館(*2)に展示されている。
*1 North Dakota Museum of Art – Grand Forks, North Dakota
*2 The College of William and Mary – Williamsburg, Virginia
「ゾーイ・パウエル-イシリアル-」
Text: Ayako Tada